日立建機の新型ICT油圧ショベル、上下左右・深さ・高さの稼働エリアを管理可能:第3回 建設・測量 生産性向上展(2/2 ページ)
日立建機は、従来機より情報化施工の機能を増やした新型ICT油圧ショベル「ZX200X-7」を2021年10月1日に日本国内で発売する。
現在と過去で取得した稼働状況の映像をスマホで確認可能
Solution Linkageの新たなソリューションで、施工の進捗管理を支援するシステム「Solution Linkage Work Viewer(ソリューション リンケージ ワークビュワー)」も導入した。Solution Linkage Work Viewerは、建機の近くでスマートフォンと車載端末をWi-Fiで接続することで、車体に搭載された各カメラで撮影された現在と過去で取得した稼働状況の映像をスマートフォンで見られ、作業の進捗を確かめられる。
加えて、標準搭載される周囲環境視認装置「Aerial Angle(エアリアル アングル)」とフロントカメラの映像により360度の周囲映像も記録する。Aerial Angleは、機体の全周囲や後方カメラの映像などをキャブ内のメインモニターに映せ、作業内容やオペレーターの好みに応じて5パターンで表示と切り替えが行え、作業員との接触事故を防ぐ。
Aerial Angleのステーショナリーモード機能では、カメラで取得した周囲の映像を基に、車体から1メートル、3メートル、5メートルまでのゾーンを色分けし、建機の稼働前に検知エリアに侵入した人や物などの移動体を認識して、警報ブザーを鳴らし、モニター上に警告マークを表示することで、オペレーターに注意喚起を図る。
また、今回の建設機械には現場作業の安全性を高めるエリアコントロール機能を初採用した。「エリアコントロール機能は、情報化施工用モニター上で、油圧ショベルの上下・左右方向の動作制限エリアを高さと深さや旋回角と旋回半、面の3種で設定できる。狭所や障害物のある現場で、作業前に機械が動かせるエリアを設定することで、指定した目標地点に近づくにつれ、建機の動作スピードを減速および停止する。建機による電線や水道管の破壊、車道への飛び出し防止に役立つ」(日立建機の担当者)。
環境性に関して、「特定特殊自動車排出ガスの規制などに関する法律」の2014年基準に適合した機種で、従来機と比較して、エンジンで排出されるPMの量を削減し、油圧システムでは燃費が10%上がっている。
サービスソリューションについては、エンジンおよび油圧機器に装着したオイル監視センサーで、稼働している機械のオイル状態を常に監視する「ConSite OIL(コンサイトオイル)」と遠隔から建機の状態診断とソフトウェアの更新を行う「ConSite Air(コンサイトエアー)」を用意している。ConSite OILは、オイルの異常をセンシングすることで、予防保全と機械寿命の延長に貢献する。
ConSite Airは、遠隔地から無線経由で、油圧ショベルのエラーコード表示やセンサーデータなどの状態を確かめ、その情報から一次判定し、判定結果をベースに、機械の復旧効率化やオペレーターへのサポートを実現。遠隔からコントローラーと通信端末のソフトウェアをアップデートすることにも応じ、更新作業を円滑にする。両サービスは、専用のWebサイト「ConSite(コンサイト)」で提供している。
今後、日立建機では、Solution Linkage Work Viewerに、クラウドを利用して遠隔で稼働状況を調べられるサービスを2021年12月に追加する予定だ。
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