清水建設が新形状のPCaボックスカルバートを開発、従来比で製作費を約15%削減:製品動向
清水建設は、隅角部の形状を直角から円弧状にすることで、局所的に作用する土圧の負荷を低減し、従来のボックスカルバートと比較して、使用する鉄筋コンクリート量を減らせるPCa(プレキャスト)ボックスカルバート「角丸カルバート」を開発した。開発にあたっては、清水建設が形状や配筋方法の検討、性能の確認を行い、千葉窯業が製造を担当した。
清水建設は、トンネル工事におけるPCa化推進の一環として、コスト削減に貢献する新形状のPCaボックスカルバート「角丸カルバート」を部材メーカーの千葉窯業と共同開発したことを2020年11月24日に発表した。
最大で鉄筋量を40%カット可能
国土交通省は、ICTの全面的な活用で、建設現場の生産性向上を目指す取り組み「i-Construction」を進めている。i-Constructionにおける重点施策の1つが土木構造物のPCa化だが、土木構造物のPCa化はコストの負担が大きいという問題がある。解決策として清水建設は千葉窯業とともに、角丸カルバートを開発した。
角丸カルバートは、隅角部を円弧状にすることで土圧の負荷を分散し、従来のボックスと比べて、局所的に作用していた圧力を30%低減する。また、隅角部内側(入隅)と外側(出隅)における円弧の中心位置を変えることで、側壁や頂版(ちょうばん)、底版の厚さを任意に設定できる。
結果、従来のPCa部材に比べ、最大で鉄筋量を40%カット可能で、コンクリート量を10%減らせ、製作費を約15%削減し、経済的に優れている。
清水建設は、実物と比較して、1/2スケールの試験体を使用した実証実験で、角丸カルバートがこれまでのボックスカルバートと同等の性能を発揮することを確認している。また、2021年秋に、清水建設が参画するJVが施工中のプロジェクト「新東名高速道路川西工事」で手掛けた開削トンネルに角丸カルバートを適用する予定だ。
トンネルの全長は98メートルで、角丸カルバートに利用するPCa部材1体の外寸は縦が7.95メートルで、横が9.7メートルに及び、幅は1メートル。重量は54トンで、PCa部材の使用数は98体。搬送トレーラーの最大積載荷重を考慮して、PCa部材を4ピースに分けて工場で製作。現場では、PCa部材の4ピースを鉄筋の継手(つぎて)とモルタルで接合し、一体化した後、所定の場所に据え付け連結して、延伸する。
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