BIM導入のメリットを検証する「大和ハウスグループチームの連携事業」Vol.1:BIMで建設業界に革命を!10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ(13)(5/5 ページ)
2020年に国交省が公募した「BIMを活用した建築生産・維持管理プロセス円滑化モデル事業」とは、策定された「建築分野におけるBIMの標準ワークフローとその活用方策に関するガイドライン(第1版)」(2020年3月)に沿って、設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する建築プロジェクトで、BIM導入の効果検証や課題分析などを試行的に行う施策である。当社は、モデル事業に選ばれなかったが、連携事業として子会社のフジタとともに、設計〜施工〜維持管理で、プロセスを横断してデータを一気通貫での活用に取り組んだ。仮想の建物ではあったが、BIMの活用において、当社のBIMの取り組みを最大限に発揮する絶好の機会となった。今回は、大和ハウス工業の連携事業について、先般開催した報告会の発表よりも、少し詳しい説明を加える。
フジタと実践でBIMデータ連携を実現
「設計・施工などのプロセスを横断してBIMを活用する」ためには、BIMデータの連携が重要となる。下記は、設計〜施工〜維持管理のデータで必要となる連携を記載した「全方位BIM連携図」である。当社とフジタとは、既にBIM標準が共通化されており、同じテンプレートやファミリを使って作業ができる環境が整えられている。そのため、設計・施工間のBIM連携がシームレスに行われた。ただ、実際にBIMで両社の連携をしたことがなかったので、連携によって顕在化した問題点など浮き彫りにすることができた。
また、連携の結果としては、事前にルールを決めて、施工図に対応した設計図を前倒しで用意することにより、施工図の作成時間を大幅に短縮できるなどの効果が確認された。
今回の連携事業で作成した図面を下図に示した。全て新規に作成した図面である。
工場での鉄骨製作図の枚数が多くなったのは、鉄骨部材の単品図などまで細かく作成したためである。一方で、施工図が少なくて済んだのは、時間の関係上、全ての施工図は作らず、代表的な施工図を作成し、同じ手順で作成する施工図は作業時間をそこから類推したからだ。鉄骨製作図・施工図ともに、設計と施工のBIM連携がどのように行われるかの考察を主な目的としたからである。設計図については、ほぼ通常と同じ作業と考えてもらって構わない。
各ステージでのBIMの取り組み
今回は、連携事業での大和ハウスグループチームの取り組みの基本的な方針とその概略を解説した。次回以降は、各ステージで具体的に何をしたのか、その結果、どのような成果効果が生まれたのか、そしてBIMガイドラインに準拠して、真に成果を出すために立ちはだかるハードルなどについて話を先に進めたい。
著者Profile
伊藤 久晴/Hisaharu Ito
大和ハウス工業 技術統括本部 建設デジタル推進部(旧・BIM推進部) シニアマネージャー(2020年9月現在)。2006年にオートデスクのセミナーでRevitの紹介をし、2007年RUG(Revit User Group Japan)の初代会長となって以来、BIMに目覚める。2011年RUG会長を辞して、大和ハウス工業内でBIMの啓蒙・普及に努め、“全社BIM移行”を進めている。「BIMはツールではなく、プロセスであり、建設業界に革命を起こすもの」が持論。
近著に「Autodesk Revit公式トレーニングガイド」(2014/日経BP)。
★連載バックナンバー:
『BIMで建設業界に革命を!〜10兆円企業を目指す大和ハウス工業のメソッドに学ぶ』
■第12回:「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣!Webインターンシップ」
■第11回:「設計BIM全社移行を実現する社内教育の秘訣」(BIM導入期編)
■第10回:「“設計BIM全社移行”を実現する社内教育の秘訣」(BIM啓蒙期・後編)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- AR:飛島建設がBIMをAR化する「Vuforia Studio」導入、設計・施工のフロントローディング実現へ
飛島建設は、DX推進の一環としてBIMをARでも活用する目的で、PTCのARコンテンツ作成プラットフォーム「Vuforia Studio」を導入した。Vuforia StudioによるBIMのAR化で、設計業務と施工現場をデジタル技術でリアルタイムに連携させ、共通の最新データの共有し、設計の修正を迅速化させ、手戻りを解消し、設計と施工間のフロントローディングを実現させる。 - 第5回 住宅・ビル・施設 Week:BIMをiPadで“見える化”する現場特化のアプリ登場、設備ベンチャーが自社開発
2020年4月に設立した空観エンジニアリングは、現場での閲覧に特化したBIMモデル用のアプリ「空観ビューワー」を開発した。BIMモデルをiPad上で表示することで、手戻り防止や現場での情報共有、トラブルへ即対応などが可能になる。 - BIM/CIM:コンストテック、BIM/CIMコミュニケーション一元化ツール「Revizto」提供
コンストテックは、建設業界の設計・施工管理に最適な、BIM/CIMの課題共有・追跡を関係者でリアルタイムに行うコミュニケーション一元化ツール「Revizto」の提供を2020年11月17日から開始した。 - いまさら聞けない建築関係者のためのFM入門(9):最新のFMに触れる、そして学ぶ方法(上)−Webセミナーに参加する−
本連載は、「建築関係者のためのFM入門」と題し、日本ファシリティマネジメント協会 専務理事 成田一郎氏が、ファシリティマネジメントに関して多角的な視点から、建築関係者に向けてFMの現在地と未来について明らかにしていく。今回は、JFMAが毎年開催している日本ファシリティマネジメント大会(通称:FMフォーラム)が2021年2月17日に開幕することを受け、合計70から成るセッションの概要を紹介する。 - FM:Web上で設備と建築の合成BIMモデルを確認、スターツCAMのFM統合クラウドサービス
スターツCAMは、BIMも含めた施設に関連する情報を統合し、ライフサイクルマネジメントを支援するプラットフォーム「FM-Integration」を開発した。FM-Integrationは、ファシリティマネジメントの共通データベースをはじめ、BIMモデルや図面管理、長期修繕計画、点検、保全管理など、FM業務におけるさまざまな機能を統合したクラウドタイプのサービスで、ビル所有者や施設管理者向けにサブスクリプションで提供している。 - Autodesk University 2020:歴史的建造物の調査を高精度に行う“クイックスキャン”、Revit連携でVR展開も
文化財保護法が一部改正され、以前は政府が行っていた歴史的建造物の管理が都道府県や市町村に委ねられることになった。実現には、歴史的建造物に関する管理や活用を市民参加型にする必要がある。レーザースキャナーや写真データを活用した歴史的建造物のデータ化は、将来的な建造物の修繕やバリアフリー化などの情報を共有化するのに有効だ。また、BIMとの連携で、調査や修繕の管理・立案などにも役立つ。 - BIM:トラスが大和ハウス工業に建材選定・管理システムを導入、BIMに連携するツールも開発
トラスは、大和ハウス工業と共同で、クラウド建材選定・管理システム「truss」とAutodesk製BIMソフト「Revit」などと連携できるツールを開発した。