飛島建設がBIMをAR化する「Vuforia Studio」導入、設計・施工のフロントローディング実現へ:AR
飛島建設は、DX推進の一環としてBIMをARでも活用する目的で、PTCのARコンテンツ作成プラットフォーム「Vuforia Studio」を導入した。Vuforia StudioによるBIMのAR化で、設計業務と施工現場をデジタル技術でリアルタイムに連携し、設計の修正を迅速化させ、手戻りも解消して、設計と施工のフロントローディングが実現する。
PTCジャパンは2021年1月28日、飛島建設の建設業務にPTCのAR技術「Vuforia Studio」を提供し、BIMデータのAR活用により、建設現場の大幅な生産性の向上につながるDX(Digital Transformation)実現に向けて支援すると表明した。
BIMモデルをAR化し、設計業務と施工現場をつなぐ
飛島建設は、2019年に策定した「新中期5カ年計画」の中で、日本の目指すSociety 5.0=超「スマート社会」に向け、全社を挙げてDX推進に着手し、経営プロセスから仕事のやり方までに至る多様なデジタル技術を積極的に採り入れている。これまでに、情報共有やコミュニケーションのための多機能ハンズフリーシステム、AIを利用したヒューマンエラーをモニタリングするシステムなどがあり、今回のVuforia Studioは、その一環として導入した。
両者は、Vuforia Studioをコア技術として活用することで、今以上にBIMデータの有効活用に注力する。飛島建設にとっては、ARやMR領域でもBIMモデルの用途が広がり、例えば3Dデータで映し出された建造物を工事現場や会議室に展開できるなど、形状やサイズが視覚的に分かる鮮明なビジュアルで顧客とのコミュニケーションが実現する。
また、施工時にはARやMRを利用して、設計データとの整合や建物の外観、内観イメージの照合、干渉チェックなど、微細な点まで視認できるため、作業効率や品質の向上にも大きく寄与する。
飛島建設 建築事業本部 建築DX推進部 部長 太田秀樹氏は、「現在、当社基盤事業の一つ建築コンシェルジュ事業では、AR/MR技術を使ったソリューションが不可欠となっている。精度の高いPTCの技術を採用することで、DXのスピードアップを図っていきたい」とコメント。
PTCジャパン 代表取締役の桑原宏昭氏は、「PTCのARプラットフォームは、開発の速さに加え、精度の高いコンテンツ提供や優れた拡張性により、飛島建設が保有する高い建設技術を支えられる。今回の飛島建設でのVuforia Studioの利活用が建設現場のさまざまな場面で認められ、建設業界全体のDX加速となることを期待している」と話す。
PTCのVuforia Studioは、多機能なARコンテンツを素早くかつ手軽に作成して、リアルタイムにコンテンツを配信できるARコンテンツ作成のプラットフォーム。建設業界向けでも、プログラミングなど特別な専門知識は要らず、3DCADやBIMのデータを読み込んで公開サーバにアップロードするだけで、ARデータに変換する手軽さが評価され、使い始めるゼネコンやサブコンが増え始めている。
変換したARデータは、「HoloLens 2」などのヘッドマウントディスプレイだけでなく、iPhoneやiPad、Androidのデバイスにも対応。ビデオ会話機能も搭載された専用アプリ「Vuforia Chalk」を介せば、AR空間にチョークで指示や指摘項目をマークするなど複数人での打ち合わせにも使える。設計段階で実物大の3Dモデルを現場に映して、工事関係者で共有することで、手戻りの大幅な削減や関係者間の合意形成が容易となり、無駄なコスト削減につながることが見込める。
今後、飛島建設とPTCは、ARやMRの技術をさらに拡張させ、IoTセンサーや業務システムとの統合、収集データの解析などを実施し、経営改革の基盤となるDX活動について継続的なコラボレーションを展開していくことを示している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 最大2000mの長距離測定を実現した地上型3Dレーザースキャナーを発売へ、TIアサヒ
TIアサヒは、災害調査やインフラメンテナンスに最適化した地上型3Dレーザースキャナー「PENTAX S-3200V/S-3075V」を発売。S-3200Vの最大測定範囲は2000mと、地表面からでも1回のスキャンで広範囲にわたる計測を実現した。その精度にも優れ、1回のレーザー照射で4つのリターン信号を記録でき、植生と地表面のデータも分離可能とした。同社では今回を皮切りに、新製品を連続でリリースしていく。 - Autodesk University 2020:歴史的建造物の調査を高精度に行う“クイックスキャン”、Revit連携でVR展開も
文化財保護法が一部改正され、以前は政府が行っていた歴史的建造物の管理が都道府県や市町村に委ねられることになった。実現には、歴史的建造物に関する管理や活用を市民参加型にする必要がある。レーザースキャナーや写真データを活用した歴史的建造物のデータ化は、将来的な建造物の修繕やバリアフリー化などの情報を共有化するのに有効だ。また、BIMとの連携で、調査や修繕の管理・立案などにも役立つ。 - OPTiM INNOVATION 2020:音声や画像で遠隔作業を支援可能なSaaSと映像取得で役立つスマートデバイス
兼松コミュニケーションズは、遠隔地から現場の作業者に指示が行えるオプティム製のSaaS「Optimal Second Sight」とさまざまなデバイスを組み合わせたサービスの開発を進めている。近年は、国内の事業所から海外の現場で働く作業員に指示が送れるサービスの開発も手掛けている。 - BIM/CIM:コンストテック、BIM/CIMコミュニケーション一元化ツール「Revizto」提供
コンストテックは、建設業界の設計・施工管理に最適な、BIM/CIMの課題共有・追跡を関係者でリアルタイムに行うコミュニケーション一元化ツール「Revizto」の提供を2020年11月17日から開始した。 - メンテナンス・レジリエンス OSAKA 2020:積木製作がVRトレーニングの新コンテンツ「脚立作業の危険性」を開発
積木製作は、現場作業員向けVR体験型の教材として、「安全体感VRトレーニング」の新コンテンツ「脚立作業の危険性」を制作した。 - BIM:フリーダムアーキが“住宅分野のBIMコンサル”を開始、BIM確認申請100件のノウハウ提供
年間約400棟の注文住宅やデザイン住宅を手掛けるフリーダムアーキテクツは、住宅分野でのBIMの環境構築や運用をサポートする「BIMコンサルティングサービス」を開始した。 - VR:工事車両の逸走事故を体験可能なVRを開発、きんでん
きんでんは2019年5月、配電工事に携わる作業員の危険感受性を高めることを目的に、受講者が容易に使える可搬型の「VR電力量計アーク災害体感教育ツール」を開発した。同ツールの教育効果を確認し、第2弾のコンテンツについて検討を行い、災害やヒヤリ・ハットの事例が多い高所作業車逸走災害を採り上げた。