清水建設が新たな繊維補強モルタルを開発、2.1mの柱型枠を2時間で3D造形:製品動向
清水建設は、3D造形用の素材として、高靭高強度の繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM)」を開発した。同社が、専用実験施設「コンクリートDXラボ」で、ラクツムの性能を検証した結果、高さ2.1メートルに及ぶ実大規模の柱型枠を約2時間で造形できることが分かった。
清水建設は、3Dコンクリートプリンティングによる構造体を兼ねた柱型枠「埋設型枠」の造形を目的に、高強度で高靭(じん)性の繊維補強モルタル「ラクツム(LACTM)」を開発した。
劣化の原因となる水や空気の侵入を助長する気泡などはほぼ無発生
近年、建設業界では慢性的な人手不足が続いている。とくにRC造の施工では、省力化と省人化が喫緊の課題となっている。解決策として、業界で注目されている部材のプレキャスト化を後押しする取り組みの1つが、3Dコンクリートプリンティングによる埋設型枠の施工だ。
しかし、3Dコンクリートプリンティング装置で、型枠のような薄い構造物を造形した場合、通常のモルタルでは10センチ積層すると形状を維持できずに崩れてしまう。また、モルタルの凝結を待ちつつ3Dコンクリートプリンティングすると作業がスムーズに進まないという問題があった。
そこで清水建設は、2020年7月に、材料押し出し方式の3Dコンクリートプリンティング装置を配備した専用実験施設「コンクリートDXラボ」を技術研究所内に新設し、同施設内で、繊維補強モルタルであるラクツムの材料配合や圧送方法、プリント速度の最適化を図るとともに、積層造形物の埋設型枠としての構造性能の検証を進めてきた。
ラクツムの構成材料には、通常のモルタルに用いるセメントと砂の他、長さ6ミリの合成短繊維や高性能減水剤、シリカフュームを加えている。使用素材は、モルタルの粘性付与や高靭性化、凝結時間の制御、高強度化をもたらす。
実験では、3Dコンクリートプリンティング装置で、幅2〜4センチ、厚さ0.7センチ、秒速10センチの速度でラクツムを押し出せば、凝固していない状態でも形状を保持したまま、高さ2.1メートルに及ぶ実大規模の柱型枠を約2時間で造形できることが判明した。
さらに、ラクツムで積層造形した埋設型枠は、実適用に必要な構造性能と耐久性能を備えている。ラクツムを使用した埋設型枠にコンクリートを充填して、構築した柱部材の構造耐力や靭性は、載荷実験による検証結果から、既存技術で作成したコンクリート柱を上回ることが明らかになっている。
加えて、耐久性能も問題が無く、積層面が目視で確かめられないほどの一体化を実現し、劣化の原因となる水や空気の侵入を助長する気泡と空隙が内部にほとんど生じないことも分かった。
今後、清水建設は、ラクツムで積層造形した埋設型枠の現場適用を目指し、施工現場で実大型枠を直接プリントするオンサイト3Dプリンティングを実現するための研究開発を進めていく方針を示している。
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