「中小工務店は全体の10%未満」、ZEH協が最新動向とZEH-M成功事例を解説:マンションビジネス総合展2020(2/2 ページ)
ZEH(Net Zero Energy House)推進協議会は新築注文住宅のZEH供給について調査した。結果、ハウスメーカーでは供給する新築物件のうち、約50%がZEHである一方、中小工務店は供給する新築住宅のうち、10%未満がZEHと水準が低いことが判明した。
全部屋にHEMSを搭載
セミナーの後半では、加納氏が、低・中層ZEH-M(マンション)の事例として大阪府大阪市で建設された賃貸マンション「(仮称)ZEM湯里」を紹介した。
ZEM湯里は、S造地上3階建てで、延べ床面積は301.71平方メートル。住戸数は6戸で、各戸の専有面積は42.99平方メートル。ZEH-MランクはNearly ZEHで、1次エネルギー削減率は、再エネを除くと32%で、再エネを含めると85%。
ZEM湯里は、2018年度における低・中層ZEH-M支援事業の対象物件で、2019年2月に竣工した。断熱材は、屋根に高性能グラスウールを採用し、外壁にはグラスウールホールドとロックウール断熱材を導入して、床下には普通グラスウールを使用した。開口部には断熱タイプのLow-E複層ガラスを組み込んだアルミ樹脂複合サッシを用いた。
専有部の空調は高効率個別エアコンで、換気はダクト式換気設備を設置した。給湯は、1階の101号室に家庭用燃料電池コージェネレーションシステム「エネファーム」を設け、102号室にはヒートポンプ式電気給湯機「エコキュート」を取り付けた。
101号室はエネファームの機能を利用した床暖房をリビングに搭載しており、102号室にはエコキュートを活用した床暖房をリビングと台所に備え、寝室には冷暖房機能を持つ輻射式の冷温水パネルを取り付けている。2階の2部屋と3階の2部屋には潜熱回収型のガス給湯器を配置。専有部と共有部ともに照明にはLED照明を採用した。
「102号室のオーナールームはオール電化だが、残る賃貸の5部屋はガス給湯設備を設置し、電気とガスを併用したマンションになっている。その理由は、2階と3階における設置面積の問題で、エコキュートが設置できなかったためだ。しかし、2018〜2019年度における低・中層ZEH-Mの採択実績でも、全体の88%が給湯設備に潜熱回収型のガス給湯器を採用している。省スペースで安価に設置できる潜熱回収型のガス給湯器が高く評価されているからだ」(加納氏)。
101号室は現在、ZEH-Mのモデルルームとして利用されており、設置されたHEMS(Home Energy Management System)が、電力計測機能付き分電盤や電動シャッター、ルームエアコンに接続しており、HEMSで消費電力を確かめたり、電動シャッターを制御したりできる。
102号室は、乾燥機やルームエアコン、冷温水パネル、計測機能付き分電盤など全設備がHEMSでつながっており、各設備の統合管理が行え、HEMSを利用して、太陽光発電パネルの発電状態や電力会社からの買電状況を確かめられる。
2階の201号室と202号室や3階の301号室と302号室は、HEMSが計測機能付き分電盤分電盤とルームエアコンに接続している。そのため、全部屋で場所を選ばずにスマートフォンからクラウドを介して、ルームエアコンの操作と室温を確認できる。
ZEM湯里の外皮断熱性能はUA値の平均が0.52W/m2Kで、建物のエネルギー性能評価は、エネファームと太陽光パネルの創エネ量とマンションの省エネ量を足して、83%の1次エネルギー削減を果たし、Nearly ZEHを実現している。
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