東京23区のオフィスビル供給「大量供給の反動で2021〜22年は過去半分まで大幅減」:産業動向(2/2 ページ)
森トラストは、東京23区内のオフィスビル供給量の動向を示す2019年版のレポートを公表した。今後の市場予測では、2021年を境に、これまでの大量供給の反動で、例年の半分以下にまで落ち込むが、2023年は回復基調に戻ると予想している。
建て替えから、未利用地の有効活用へシフト
開発用地別の供給動向では、都心3区では、これまで「建て替え」が供給の大部分を占めてきたが、近年は「低・未利用地(再開発など)」における供給が伸び、とくに2019〜23年の5年間は、「低・未利用地(再開発など)」が5割以上となる。都心3区以外に至っては、「低・未利用地(再開発など)」の供給が7割超を維持する【図3-2】。
23区全体におけるオフィスビル開発用地の傾向としては、2019年以降は、従来型の建物と敷地を一体利用していた土地のスクラップアンドビルドタイプによる建て替えではなく、小規模ビルをまとめた高度有効利用を目指した土地での開発をはじめ、駐車場や老朽建物が混在した虫食い状の土地、住宅密集地、工場跡地、遊休地など、これまで有効利用されていなかった土地がオフィス供給用地の主体となりつつある。
中規模オフィスビルに目を向けると、2018年の中規模オフィスビル供給量は12.9万平方メートルで、前年の供給量を上回ったが、過去10年の平均13.2万平方メートルは下回る結果となった。2019年、2020年も、過去平均を下回ることが予想され、中規模オフィスビルの供給量は下落傾向にある。
2019〜20年の区別供給割合をみると、港区が4割を占めて最多となる。また、供給量が最も多い地区は「虎ノ門・新橋」。大規模オフィスビルの供給量と同様に、区別では「港区」が、地区別では「虎ノ門・新橋」が最多となる見込み。
中規模オフィスビルの特性としては、23区全体で「建て替え」が開発用地の中心にあり、「低・未利用地」が主体となりつつある大規模オフィスビルとは異なる傾向にある。
レポートのまとめでは、2018年は過去平均を4割程度上回る供給がなされたが、ほぼ全ての新築大規模オフィスビルが満室。2019年竣工のビルも大部分で募集を終了させ、過去3番目に高い水準の供給が見込まれる2020年竣工ビルも、テナント誘致が進んでいるとしている。
しかし、2021〜22年は一転して、新築オフィスビルの供給量が過去平均のおよそ半分にまで引き締まる。その後、2023年には供給量が過去平均と同水準まで回復し、大量供給後の反動減も一服。2018年以降、3年間の大量供給による需給バランスの悪化懸念は、杞憂に終わったとみている。
2023年以降については、供給量が回復し、ストックも上昇基調へと変化する可能性があると予想。賃貸オフィス事業者は、現在の移転・増床ニーズの背景にある「優秀な人材の確保を狙ったオフィス改善の動き」「働き方改革に後押しされる働く場所を多様化させる動き」「生産性や創造性の向上につながるオフィスを求める動き」といった市場のトレンドをつかみ、新築オフィスビルのみならず、既存オフィスビルでも、対応策を講じることが必要と提言している。
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