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「ネット・ゼロ・エネルギー」が現実に、オフィスビルや住宅にも広がる2015年の電力メガトレンド(5)(1/2 ページ)

節電と発電を組み合わせてエネルギー消費量をゼロにする「ネット・ゼロ・エネルギー」の取り組みが活発だ。政府の補助金の効果もあって、オフィスビルや店舗で実施するケースが増えている。住宅でも最新のスマートハウスに蓄電池を組み込んで、光熱費をゼロ以下に抑える事例が出てきた。

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連載第4回:「エネルギーミックス決定へ、原子力と再エネともに20%超の未来」

 「ネット・ゼロ・エネルギー」は正味のエネルギー消費量をゼロにすることである。実際にはビルでも住宅でも電力やガスなどのエネルギーを消費するが、それと同じくらいのエネルギーをみずから作り出すことで「差し引きゼロ」にする発想だ。その結果、光熱費もCO2排出量も大幅に減る。

 オフィスビルを例にとると、建物の外皮性能を断熱などによって高めたうえで、照明やOA機器に省エネ製品を導入してエネルギーの消費量を削減することが基本だ。こうした省エネ対策でエネルギー消費量を半分程度まで減らす一方、残りを太陽光発電などの創エネでカバーすれば、ネット・ゼロ・エネルギーを実現できる(図1)。


図1  「ネット・ゼロ・エネルギー・ビル(ZEB)」の実現イメージ。出典:環境共創イニシアチブ(SII)、経済産業省

銀行の支店もネット・ゼロ・エネルギーに

 率先してネット・ゼロ・エネルギーに取り組んだのは建設会社である。大林組は東京都内にある技術研究所に、最先端の環境技術と省エネ設備を導入したビルを2010年に完成させた。さらに屋上一面に太陽光パネルを設置して、2014年度から「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)」を実現する。太陽光発電の電力量がビル全体のエネルギー消費量を上回る見込みだ(図2)。


図2 「大林組技術研究所」の全景(上)と一次エネルギー消費量の削減(下)。出典:大林組

 さらに銀行でも先進的なプロジェクトが進んでいる。滋賀銀行が2015年3月に開業する支店を「カーボンニュートラル店舗」として建設中だ。断熱機能の付いたガラスや太陽光を室内に取り込む装置などを採用して、空調や照明によるエネルギー消費量をほぼ半減させる。

 そのうえで店舗と駐車場の屋上に合計360枚の太陽光パネルを設置して、エネルギー消費量を相殺する考えだ(図3)。太陽光発電による電力量は年間に9万1000kWhを見込んでいる。一般家庭で25世帯分の使用量に相当する規模になる。滋賀銀行は金融業界で初めて環境省から「エコ・ファースト企業」に認定されて、オフィスの省エネを積極的に推進している。


図3 「滋賀銀行栗東支店」の完成イメージ(上)とCO2排出量の削減(下)。出典:滋賀銀行

 経済産業省もオフィスビルや住宅を対象にした補助金制度を2012年度から開始して、ネット・ゼロ・エネルギーに取り組む企業や家庭を支援してきた。国内のエネルギー消費量の推移を見ると、オフィスなど業務用の伸びが著しいからだ(図4)。1990年の時点と比べて40%以上も増加した。家庭のエネルギー消費量も20%増えている。


図4 最終エネルギー消費量の推移(PJ:ペタジュール、1PJ=約2.78億kWh)。出典:経済産業省

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