大成建設の合意形成を支える「建設承認メタバース」 生成AI連携で現場定着の壁を突破:AI×メタバース(3/3 ページ)
大成建設は、発注者との合意形成を効率化する「建設承認メタバース」を開発した。BIMをベースにした3D建物空間の共有に加え、仮想空間での検証から承認までの打ち合わせを生成AIとの連携で、記録して保管する今までにないデジタルツインシステムだ。ゲーミフィケーション要素で承認プロセスを効率化した新規性が評価され、「日本DX大賞」の奨励賞を受賞している。
フルスペック導入ではなく、使いたい機能から広げる
建設承認メタバースは、大成建設内で段階的に利用が広がっている。メタバース機能は現在20件超の現場で利用され、累積では30件程度に達している。Rimo Voiceも、建設承認メタバースの一機能としてだけでなく、単体利用を含めて約150部署に広がり、文字起こしの利用時間は月1500時間を超える。
ただし、利用拡大は当初から順調に進んだわけではない。建設承認メタバースについては当初、フルスペックで導入しようとしたが、現場がいきなり全ての機能を使いこなすのはハードルが高かった。そこで、現場が「これなら使える」と感じた機能から採り入れたことで普及が進んだ。
機能改善も重ね、現場の要望を取り入れながら、必要な機能を追加してきた。「自社開発の強みは、現場の要望に柔軟に応えられることにある。作業所と意見交換しながら、必要な機能を実装してきたことが、利用拡大につながっている」と川瀬氏は解説する。
Rimo Voiceについても、大成建設とRimoが協議を重ね、AIモデルや出力内容を調整した。導入初期はAIが生成する議事録が簡潔すぎることもあったが、現在は通常の打ち合わせや定例会議でも使いやすい粒度で出力する。こうした改善は、利用効果にも表れている。大成建設が利用部署に行ったアンケートでは、議事録作成にかかる作業時間について、「3〜7割程度の削減につながった」という回答が多かった。
さらに現場定着を支えたのが、DXツールを現場に広げるための「キャラバン隊」と呼ぶ活動だ。建築本部の生産技術イノベーション部が設立したチームで、Rimoをはじめ大成建設が利用しているツールのITベンダーが参加し、作業所を回りながら使い方や設定を支援している。「本社から『このツールを使いなさい』という指示だけでは現場に普及しない。現場に出向き、生の声を聞きながら、分からないことをその場で解決することが定着につながる」と川瀬氏は説く。
合意形成から課題管理へ、建設承認メタバースが目指す次の段階
建設承認メタバースのさらなる進化に向けた動きもある。大成建設とRimoは現在、Rimo VoiceのAI機能を活用し、打ち合わせで生じた懸案事項のTo Do管理や課題解決までを自動化する“AIエージェント”機能についても協議を進めている。
その際に重要になるのが、現場独自の背景をいかに読み込むかだ。佐伯氏は、「課題解決まで目指すとなると、単純なLLMの知識だけでは不十分。現場で管理している議事録や資料の独自手順やこれまでの経緯といったコンテキストを踏まえて、AIで解決策を導き出す必要がある」と提言する。
川瀬氏が最終的な目標として見据えるのは、合意形成から承認までを一つのシステム上で進められる形にすることだ。「使ってもらえる機能、使いたいところから使うという段階から、徐々にメタバース機能全体として使ってもらう方向にしていきたい。メタバースシステムを使って、発注者との合意形成を最後の結論まで詰められれば」と構想を明かす。
発注者との合意形成を効率化するために始まった建設承認メタバースは、BIMを起点に誰でも確認できる3D空間として共有し、議事録やエビデンス保管、課題管理へと機能を広げつつある。3D確認ツールにとどまらず、建設プロジェクトの意思決定を迅速化し、建設生産プロセスすらも変革する可能性を秘めている。
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