不夜城と呼ばれた千葉の地場ゼネコンが「ニコニコ帰れる日」を実現するまで 建設DX15年の道のり:地場ゼネコンのDX(1/5 ページ)
千葉県成田市に本社を置く地場ゼネコンの平山建設は、2011年のGmail導入以降、約15年にわたりデジタル技術の活用による業務改革を進めて来た。工事部の平均残業時間は月40時間超から26時間へ減少した一方で、平均年収を170万円以上引き上げた。平山建設 代表取締役社長 平山秀樹氏らに業務改革の歩みを聞いた。
千葉県成田市に本社を置く地場ゼネコンの平山建設は、Google Workspaceを基盤に、BIMや生成AIを活用した業務改革を進めて来た。平山建設とグループ会社では社員の8割以上が日常業務で週1回以上生成AIを利用。社内に部門横断のAI活用チームを立ち上げ、ITの専門知識を持たない社員が、建設コストの予測モデルや勤怠管理アプリなどを次々と開発している。
平山建設が現在の姿に至るまでの道のりは平たんではなかった。「不夜城」と呼ばれた長時間労働の常態化、デジタル化に対する社内の反発、約1300万円を投じながら定着しなかったSFA(営業支援システム)――。約15年の試行錯誤からたどり着いたのは、DXとは新しいツールを導入することではなく、現場が働きやすいように仕事と情報の流れを設計し直すことだという考え方だった。
「鈴木課長が毎日ニコニコ帰れる日を目指そう」。2018年に掲げた目標が、どのように社員自らAIで仕事を変える組織へとつながったのか。平山建設 代表取締役社長 平山秀樹氏、専務取締役 工事DX本部長 土屋剛氏、工事DX本部 工事部長 鈴木智明氏に改革の歩みを聞いた。
1300万円を投じたSFA廃止で分かったDXのあるべき姿
平山建設は1901年創業、賃貸マンションを主力とする地場ゼネコンだ。これまでに手掛けた賃貸マンションは累計153棟、4465世帯に上る。現在は建設事業に加え、グループでホテル事業や不動産事業も展開し、従業員数は平山建設単体で86人、グループ全体で110人を数える。
平山建設が情報共有の在り方を見直す契機となったのは、2011年の東日本大震災だった。成田市は震度6弱を観測し、液状化による被害も発生した。平山建設の旧本社や建設中の現場、管理物件なども被災し、電話やFAXには「屋根が壊れた」「設備が使えない」といった100件を超える問い合わせが殺到した。「情報が錯綜する中、3班体制で対応に当たった。社員は本当によく頑張ってくれたが対応は後手に回った。データを共有することの重要性を痛感した」と平山氏は振り返る。
当時利用していた外部メールサーバはスパムメールも多く、必要な情報を探し出すのに時間がかかっていた。そこで2011年にGmailを導入。その後、2013年ごろから本格的にGoogle Workspace(当時はGoogle Apps for Business)を軸とした業務のクラウド化を進めた。
もっとも、そこからデジタル化が順調に進んだわけではない。当時の役員からは「現場のことに口を出すのは100年早い」と反対され、社員にも「現場は紙で動いている」という意識が根強く残っていた。
営業から設計、施工までの情報を一気通貫でつなぐことを目指してSFAを導入したものの、営業部門では案件管理ツールとして一定程度活用された一方で、その先の設計・施工部門にはほとんど浸透しなかった。現場の社員にとっては「仕事が便利になるシステム」ではなく「入力作業が増えるシステム」に見えていた。会社が期待した部門横断の情報共有は実現せず、数年間の運用を経て、最終的に廃止することになった。平山氏は「ライセンス費用や運用費を含めて約1300万円を投じた。残念な思いはあったが、なくても仕事が回るならやめた方がいいと判断した」と明かす。
この経験を通じ、平山氏はDXに対する考え方を改めた。会社が管理したい情報を一元的に集めようとすれば、社員の負担が増え現場の反発を招く。考えるべきは現場が仕事をしやすくなる仕組みであり、その結果として必要な情報が集まる形を目指さなければならない。
現在は、各部門がそれぞれの仕事に合った方法で情報を管理しながら、全社で共有すべき情報はクラウドで一元管理する仕組みを採用している。この考え方は、平山建設が1997年から運用してきたISO 9001の枠組みとも重なる。各部門が次の工程へ必ず渡す情報をあらかじめ定め、それ以外の管理方法は各部門の裁量に委ねるという発想だ。
単にシステムを導入するのではなく、実際の仕事に定着し、社員の負担を減らせるかどうかで判断する。SFAの廃止の経験は、その後の平山建設のDXを方向付けることとなった。
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