昇降機トップメーカーが技術の裏側公開 日本オーチスが「大人の社会科見学」開催:次世代のスマートビル(2/2 ページ)
エレベーターの世界最大シェアを誇るオーチス・エレベータの日本法人「日本オーチス・エレベータ」は、成田空港からほど近い中核拠点で、インフルエンサーやメディアを招き、「大人の社会科見学」を開催。最新機種「Gen3」のIoT技術や熟練エンジニアによるセル生産方式など、エレベーターの安全を支える裏側を公開した。
IoTと熟練の「セル生産」が支える最新ソリューション
ツアーでは、コンストラクション・トレーニング・センター、パーツセンター、制御装置部、テストタワー、コールセンターなどを視察した。
2025年6月新設のコンストラクション・トレーニング・センターは、エレベーターの安全稼働を守る技術者を育成する場だ。新入社員が約2カ月にわたって徹底した実技研修を受ける。設置に関わる協力会社のエンジニアにも、技術研修のプログラムを提供している。
メンテナンス作業は、「JHA(Job Hazard Analysis)」と呼ばれる危険分析の枠組みに則っている。起こり得る危険を事前に抽出し、安全な作業の手順を上長に提出する。技術だけでなく、安全に作業するための習慣を体に覚えさせることで、重大事故を未然に防ぐ。
最新のエレベーターには、多くの安全技術とデジタル技術を投入している。その先進技術を製品という形にしているのが、製造部門の「制御装置部」だ。1人の作業者が部品の取り付けから配線、最終検査までを一貫して担う「セル生産方式」を採っている。
制御装置部の責任者は、「エレベーターは顧客ごとの仕様が複雑で、2つとして同じものはない。一人ひとりが図面を見ながら、顧客の望む価値を具現化している」と解説した。その実現には、作業にあたる各エンジニアが高い知識と技術を習得している必要があるため、技能を認定する厳しい社内制度を整えている。厳しい基準で担保された高い技術力と、運搬ロボットの導入といったデジタル化が、高品質な製品づくりを両輪で支えている。
「安全」を絶対視する教育と、24時間の見守りを実施する「OTISLINE」
現在、日本オーチスでは、全国約8万7000台のエレベーターと契約し、保守業務を提供している。膨大な数の機器を24時間365日見守るのが、カスタマーサポートと監視センターの「OTISLINE(オーチスライン)」だ。OTISLINEは、巨大モニターに表示された気象や地震などの情報を注視し、閉じ込めなどの緊急時にはGPSで最寄りの技術者を即座に手配する。万一の際、最新のビューディスプレイを搭載したエレベーターでは、不安に陥っているカゴ内の利用者とオペレーターがビデオ通話でやり取りし、顔を見せながら会話することで利用者に安心感をもたらす安心機能も搭載している。

保守や修理に必要な部品を保管している「パーツセンター」。エレベーターとエスカレーターの両方を合わせ、約1万3000〜1万5000種類のパーツをそろえている。最新機種だけでなく、20年前の機種の部品も確保しており、24時間365日いつでも全国の拠点に部品を出荷できるこうした日本オーチスの事業の土台には、「安全」「倫理」「品質」の絶対的な価値観がある。ヨング氏は「安全は単なる優先事項ではなく、あらゆる意思決定の基準だ。当社のビジネスは人の命に関わるものだからだ」と断言した。
その哲学は、特に「倫理」において顕著に表れている。日本オーチスでは、日本の商慣習にありがちな接待やマージンといった不透明な取引を一切排除している。誠実なやり方を貫く姿勢は、時に競合に対して不利な状況を招くこともある。しかし、ヨング氏は「倫理を実践することで、顧客に私たちの仕事が正しいやり方だと信じていただける。長期的には最強の信頼関係にもつながる」と自信をみせた。
社員と社長によるトークセッション。左からパトリック・ヨング氏、東日本支社 首都圏支店 城南営業所 営業チーム リーダー 大泉翔氏、コントラクト ロジスティクス&パーツセンター本部 設計部 意匠設計課 意匠設計チーム 藤田羚菜氏、建設本部 工事管理部 奥野淳氏
今回の見学会は、創業者が170年前に発明した「安全ブレーキ」の精神が、最新の技術や現場の1人ひとりの技能、そして誠実な企業姿勢の中に、今も脈々と受け継がれていることを対外的にも示すイベントともなった。「人々がつながり、豊かになる自由を提供すること」。日本オーチスは、そのビジョンの下、単なる移動手段を超えた社会インフラとしての使命をこれからも果たし続けていく方針だ。
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