三菱電機ビルソリューションズの「AI-Ready」戦略、AWSとの協業で初弾は昇降機保守のKYアプリ:AIで現場の危険を予測!(3/3 ページ)
三菱電機ビルソリューションズは、2025年10月に全社のAI活用を推進する「AI推進プロジェクト」を立ち上げた。AWSとの協業も含めた共通基盤の整備や人材育成を通じて「AI-Ready」を進め、2030年に向けて「データ駆動型の事業」の実現を目指す。その初弾となる実装成果が、現場の危険予知活動を支援する「KY-Supportアプリ」だ。
AWSとの協業で短期開発とグループ連携が実現
KY-Supportアプリは、構想から約9カ月で実用化し、ユーザーテストを経て約11カ月で完成に至った。スピード感のある開発で多大な役割を担ったのがAWS(Amazon Web Services)の存在だ。三菱電機は2024年1月、AWSとデジタル領域で戦略的協業に向けた覚書(MOU)を締結している。
アプリ開発では、ユーザーインタフェースの改善にもAWSの知見が生かされた。当初、第1ラウンドの危険ポイント確認画面は縦に長く、スクロールの手間があった。ユーザーテストの指摘を受けて画面構成を変更した点について加藤氏は、「AWSがアプリ制作に慣れており、その知見を十分に発揮してもらった」と評価する。
AWSとの協業には、開発面以外のメリットもある。三菱電機グループ全体として、AWSと共同開発したデジタル基盤「Serendie(セレンディ)」を運用しているため、他事業本部とも幅広い事業領域でデータを集約可能で、将来は三菱電機側の仕組みやAIエージェント機能との連携も見据えている。
また、エレベーターやエスカレーターといった昇降機の災害情報には個人名や顧客現場名、ビル名などが含まれるため、外部SaaSではなく、三菱電機グループのAWSのクラウド環境内で扱いたいというデータセキュリティ上の理由もAWSを選択した理由だ。
2030年に向け、データ駆動型の事業へ
AI推進プロジェクトやKY-Supportアプリの取り組みは、MEBSが描く2030年の理想像にもつながる。山崎氏は、ITシステム戦略部として2030年までのありたい姿に“データ駆動型”事業を掲げる。ITシステム戦略部、各事業本部などの視点やデータを循環させ、業務効率化や自動化、さらには事業価値の創出にもつなげる構想だ。
山崎氏は「業務DXはAIや生成AIだけで完結するものではない」と強調する。MEBSは、2022年に三菱電機のビルシステム事業と三菱電機ビルテクノサービスの統合で設立された。そのため、現在もシステムやネットワーク、ファイルサーバなどで二重化した部分が残っており、統合してデータ連携を進めることは、業務DXで避けて通れない要素だ。
データ活用の観点では、統合が用途の幅を広げ、AIを使う基盤となる可能性も秘めている。ビル設備の製品情報と保守に関する情報を組み合わせやすくなれば、フィールドエンジニアがメンテナンスの現場で必要とする技術文書や保守データをAIエージェントが一括で抽出するといったことも可能になる。
鈴木氏も、「今後は生成AIやAIエージェントが共通基盤に実装され、各部門のユースケースが広がれば、KY-Supportアプリの安全支援をはじめ、RAG(検索拡張生成)による技術文書検索、問い合わせ対応、フィールド業務支援だけでなく、顧客のビルオーナー向けサービスへと展開していく可能性がある」とみる。
昇降機やビル設備の保守という現場第一と専門性の高い領域で、AIをどう業務に実装していくのか。MEBSの“AI-Ready”の方針は、建築関連企業にとっても、AI活用を現場に定着させるための具体的なモデルケースとなりそうだ。
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