難病を抱えながら設計者として働く「RDワーカー」のリアル 日建設計がNPO法人とシンポジウム:プロジェクト(3/3 ページ)
日建設計とNPO法人両育わーるどは、難病のある人の働き方を問い直すシンポジウムを共創拠点「PYNT竹橋」で開催した。建築デザインの視点から誰もが働きやすい社会を探り、「RDワーカー」の認知拡大と次なるアクションに結び付ける議論を深めた。
かっこよさと優しさは両立できるのか
ディスカッションの話題は、デザインの在り方へと移った。馬場氏が、かっこいいデザインと誰にとっても優しいデザインは両立できるのかと問いかけると、外崎氏は、決して簡単ではないが可能と答えた。難病を伝える際も「深刻さばかりを前面に押し出すのではなく、ポジティブに、明るく、楽しく、それでいてみんなに優しい。そうした表現やデザインは十分に実現し得る」と語った。
山梨氏は、病気になってから、会社で若いメンバーが自然に椅子を引いてくれるようになったエピソードに触れ、「そうした優しさを伴う関係性はデザインにも持ち込めるのではないか」と提案。
西氏も優しさとは結局、「誰のことを想像できているかに尽きる」と応じた。みんなが使いやすい空間を目指すとき、その「みんな」の中に入っていない人がいないかを意識することが大切とし、当事者参画の重要性を改めて強調した。
個々のニーズを社会にどう反映させるか
次のテーマは、「個々のニーズを社会にどう反映できるか」だ。重光氏は、そのためには柔軟な働き方を試すことが欠かせないとし、「1日8時間、週40時間という枠で考えるのではなく、働きたいという気持ちがあるなら、0でもいいし、できない日があってもいいというくらい柔軟に考える実験をしていくしかない」と述べ、自身の団体で事例を積み上げていきたいとの方向性を示した。
山梨氏は、「多様性の時代に求められているのは、標準を設計することではなく、個別の解をどれだけ多く設計できるかだ」と指摘した。インクルーシブデザインもRDワーカーの議論も、「こういう人だから、こういう制度をつくればいい」と決め打ちするのではなく、まずやってみて、うまくいかなければ軌道修正することが重要となる。
外崎氏もまた、難病のある人の働きやすさを広げる議論は、結局「標準とは何か」を問い直すことにつながると指摘。リモートワークの普及を例に挙げ、「多様な事情に応じた働き方が可能になれば、活躍できる人の幅も広がる」とした。
最後に重光氏は、「難病の開示には勇気がいるが、そこから接点が生まれ、理解が深まることもある。少しだけ自分の困難を開示し、お互いさまと言い合える社会になれば、心理的安全性が高まり、必要なニーズも見えてくるのではないか」と投げかけ、ディスカッションを締めくくった。
「RDワーカー」を伝える四つのクリエイティブを発表
イベント後半では、「RDワーカーのクリエイティブから共創する」を主題に、電通/電通クリエイティブピクチャーズのクリエイターらによる4つのクリエイティブ作品を発表した。
発表に先立ち、両育わーるどの伊藤沙幸氏が壇上に登り、「難病当事者や家族が抱える困難は言葉だけでは社会に十分伝わりにくく、クリエイティブには人の心を動かし、社会に働きかける力がある」と力強く語った。
クリエイティブ作品は、RDワーカーを象徴するロゴとポスター群「RD WORKER Logo - A Symbol of Possibility」、昔話「桃太郎」を下敷きに、自分の歩幅で働くことを描いた絵本「日本いまばなし『ももたろうの転職活動』」、支える側の理解や支援の気持ちをキャラクターで表明するコミュニケーションツール「お気になさらズ」、そして「RD WORKER」のタイポグラフィを擬人化し目に見えない痛みや症状を動きと音声で可視化する映像作品「Symptom Typography - See the Pain」の4つだ。
それぞれ、RDワーカーの多様さや可能性、働き方の選択肢、支え合いの姿勢、見えにくい症状への理解を異なる表現で社会に伝えることを意図した作品となっていた。

「RD WORKER Logo - A Symbol of Possibility」。RDワーカーのロゴの展開と、ロゴで漢字の「光」を表現したポスター。右の写真は、ロゴとポスターを企画制作した左から森島洸氏と神戸弥宙氏
絵本「日本いまばなし『ももたろうの転職活動』」。当事者だけでなく、現代の「働くこと」に息苦しさを感じている人にとっても、選択肢を広げるヒントとなる想いを作品に込めた。右の写真は、絵本を企画制作した左からアートディレクター/イラストレーターの夏井一紗氏とコピーライターの友野菜々子氏Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
日建設計、行動変容がテーマの新サービス「コモンズグループ」開始
日建設計は、行動変容をテーマとしたコンサルティングサービスを提供する「コモンズグループ」を設立した。これまでの知見を生かし、社会やクライアントが目指す姿に合わせて、一人一人の「行動変容」を促す仕組みとしての建物や空間、制度やプロセスなど、多様な提案を行う新組織だ。
日建設計、日本の森林保全に向けた木材活用「どこでもつな木キット」販売開始
日建設計は木質ユニット「つな木」シリーズの第2弾である「どこでもつな木キット」を販売開始した。日本の森林保全に欠かせない木材活用の促進を目的に開発、木材を適切に使い続けることが木材資源の循環を促し、森林の維持につながると考える。
日建設計と東大、地震後の建物の蓄積ダメージを正確に把握できるシステムを共同開発
日建設計と東大は、地震後の建物の蓄積ダメージを正確に把握できるシステムを共同開発した。仕上げに覆われた柱や梁のひずみの直接測定やダメージの蓄積度から安全性を正確判断し、建物の早期復旧を支援するとともに、安心な継続利用を実現する。
環境改修“ゼノベ“第1号「日建ビル1号館」のテナントリーシング開始 「つくし坊や」とコラボ
日本政策投資銀行とDBJアセットマネジメント、日建設計は、不動産業界のCO2排出量実質ゼロの実現に向けて、環境改修モデルの構築と普及を目指す「ゼロエネルギーリノベーションプロジェクト」(ゼノべプロジェクト)を推進している。3社はゼノベ第1弾物件で、2025年3月に竣工予定の「日建ビル1号館」について、テナントリーシング活動を開始した。
日建設計、AIと人や社外との「共創」掲げる新5カ年計画 ソフトバンクとの合弁で来春ビルOS提供
日建設計は、2030年に売上高990億円を目指す、新たな5カ年経営計画を策定した。新しい経営ビジョンでは「共創」を軸に、社内ではAIとの共創による建築生産システムの構築、対外的には共創施設「PYNT」を活用した他社との協業など、「社会環境デザインのプラットフォーム」企業を目指す方針を打ち出した。その成果の1つとして、ソフトバンクと共同設立した新会社が、2026年3月から次世代のスマートビル普及に向けたビルOSを提供する。
“新国立競技場”設計BIMの実践がArchicad新機能開発のヒントに!日建設計とグラフィソフトジャパンの挑戦
戦略的パートナーシップを締結して、Archicadの機能向上に努めてきた日建設計とグラフィソフトジャパン。その協働の歩みと、新機能開発にもつながる日建設計のBIM活用術を探った。






