名建築「山の上ホテル」を竹中工務店が再生 ヴォーリズの意匠を生かし、2027年夏開業:プロジェクト
文豪に愛され、惜しまれつつ休業している東京都千代田区神田駿河台にある名建築「山の上ホテル」が、明治大学と竹中工務店の手によって2027年夏にクラシックホテルとして蘇る。18年間の貸借契約を締結しうた竹中工務店は、ゼネコンの新規ビジネス創出となるレガシー活用事業として、名建築家ヴォーリズの意匠を生かした改修だけでなく、長期にわたるホテル活用までを主導する。
明治大学と竹中工務店は2026年3月2日、2024年11月に明治大学が取得した「山の上ホテル」の歴史的建築物の保存と継承に向け、期間約18年(改修工事期間を除く)の定期建物賃貸借契約を締結した。単なる改修工事の受注にとどまらない、レガシー活用事業として、ゼネコンの新規ビジネス創出を示すプロジェクトにもなる。
ゼネコンが自ら借り受け、改修や活用を主導する「レガシー活用事業」
今回の賃貸借契約で竹中工務店は、竹中工務店が推進する新規事業「レガシー活用事業」として、設計・施工を請け負うだけでなく、建物を長期にわたり一括で借り受ける契約(マスターリース)を結んだ。創建時の趣や外観を最大限に尊重しながら自らの手で改修工事を進め、客室、レストラン、宴会場を備えたクラッシックホテルとしての再始動をけん引する。
竹中工務店のレガシー活用事業は2018年度から取り組んでおり、これまでに旧山口萬吉邸/九段ハウス、堀ビル/goodoffice新橋、旧第一銀行横浜支店/BankPark YOKOHAMAに続き、本物件で4件目となる。
歴史的価値の高い建物を保存するには、現代の耐震や環境、設備基準に適合させるための高度なエンジニアリング力と膨大なコストが不可欠となる。竹中工務店が持つトップクラスの技術力と不動産運用を掛け合わせることで、「名建築の保存と事業性の両立」を目指す次世代の建設ビジネスの試金石にも成り得る。
山の上ホテルは、1937(昭和12)年に米国の名建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズ(William Merrell Vories)氏の設計で建設。その建設資金を寄付したのが、明治大学校友の佐藤慶太郎氏だ。当初は大日本生活協会の本部として「佐藤新興生活館」の名称で供用されるなど、大学と歴史的に深いつながりを持つ。戦後はGHQに接収され、WAC(米国婦人陸軍部隊)の宿舎となった後、1954年に返還されてホテルとなった。
明治大学は2031年に創立150周年を迎え、その記念事業の1つとして2024年11月15日に山の上ホテルを取得し、「外観を維持しながらホテル機能を継続させる」と宣言。今回、竹中工務店というパートナーを得たことで、長年の構想が具現化することになる。
再開業は2027年夏の予定で、竹中工務店の設計・施工により、ヴォーリズ建築のレトロでクラシカルな意匠はそのままに、現代の安全性と快適性を備えた施設へと生まれ変わる。明治大学は、短期留学プログラムの宿泊施設や生涯学習拠点「リバティアカデミー」主催のプログラム会場、地域連携の場などでの活用も予定しており、商業施設にとどまらない、パブリックな価値を持った広かれた空間となることが期待される。
山の上ホテルの建物概要は、所在地が東京都千代田区神田駿河台1-1。構造と規模は、鉄筋コンクリート造地下2階/地上5階建て、建築面積1294平方メートル、延べ床面積4586平方メートル。
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