BIM/CIMデータを基盤に3D流体解析、ダム再開発に導入 放流をデジタルツイン化:デジタルツイン
大林組、日立パワーソリューションズ、日立製作所は、岐阜県の新丸山ダム本体建設工事で、BIM/CIMを活用した3D流体解析技術を導入し、ダムの放流状況を高精度にデジタルツイン化することに成功した。
大林組、日立パワーソリューションズ、日立製作所は2025年11月19日、国土交通省中部地方整備局発注の新丸山ダム本体建設工事で、BIM/CIMデータを活用した3D流体解析により、ダムの放流状況を高精度にデジタルツイン化することに成功したと発表した。設計・施工方法検討期間の短縮と安全リスク評価の高度化につなげた。
新丸山ダム本体建設工事は、岐阜県加茂郡八百津町と可児郡御嵩町にまたがる既存の丸山ダムを20.2メートルかさ上げし、新設ダムを構築するプロジェクト。既存ダムと新設ダムが一部重なる構造形式で、国内では前例がない技術的にも高難度なダム再生事業だ。
3社は今回、最新の現地状況を正確に再現したBIM/CIMデータを基盤に解析用モデルを作成し、3D流体解析を実施。既存ダムからの放流や新設ダムの仮排水トンネルからの放流状況を高精度にデジタルツイン化し、設計・施工方法の検討に役立てた。従来は工事進捗に伴う放流状況の変化の評価に1年程度を要していたが、新手法により約3カ月で実施可能となった。
今回の取り組みでは、丸山ダムの放流設備(ゲート)から下流の河道をモデル化して、放流量を想定した解析を実施。施工現場付近の最大水位を予測し、再開発現場の被災リスクを見積もることができた。また、BIM/CIM活用で河床形状を高精度に解析可能になり、上流からの流れが護岸に衝突して生じる渦を巻く流れや、水面と川底で流れの速さが異なる状況などを、断面図で把握できる。
さらに、ダム湖から下流へ通じる「仮排水トンネル」もモデル化し、解析を実施。出口部での減勢状況や跳ね返りの流れを再現でき、流量と放流状況の把握が可能になった。
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