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ビルメンメンテナンスサービスからみたBIMの可能性【BIM×FM第9回】BIM×FMで本格化する建設生産プロセス変革(9)(1/2 ページ)

本連載では、FMとデジタル情報に軸足を置き、建物/施設の運営や維持管理分野でのデジタル情報の活用について、JFMAの「BIM・FM研究部会」に所属する部会員が交代で執筆していく。本稿では、日本空調サービス FM管理部 FM事業企画チーム所属の白川愛幸氏がビルメンテナンスサービスの見地から、BIMを動的情報のハブと位置付けた際の可能性を解説する。

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 「何でも出来そうだけど、何にもできなさそう…」。この言葉は、当社がビルメンテナンスにおけるBIM(Building Information Modeling)活用を調査する中で、ある顧客からいただいた実に示唆に富んだ一言だった。

 ビルメンテナンスサービスにおけるBIMの可能性を探るため、顧客の施設をBIM化していくプロジェクトを進める中で、BIMモデルがどのように見え、どのようなことに活用できそうか、具体的な案を提示する中で、この言葉は私の心に深く刺さった。

維持管理ではBIMだけでは不十分なのはなぜか?

 建物の形状や設備の位置を正確に再現し、そこに建材や機器の属性情報を入力したBIMモデルは、タブレットのビュワーでも簡単に操作できる。初めてBIMを操作したときは、「分かりやすいし、スムーズな情報共有ができそう」というイメージだった。

属性情報を内包するBIMのイメージ for Autodesk Revit
属性情報を内包するBIMのイメージ for Autodesk Revit 筆者作成

 しかし、現場で運用する中で、BIMだけでは不十分と感じるようになった。なぜなら、維持管理業務では、単に機器の場所や仕様が分かるだけでなく、「いつ、何が起こり、誰が、どのような処置を施したか」といった“動的な情報”の管理が不可欠だからだ。

 例えば、空調機の故障が発生したとする。BIMモデル上でその機器の正確な位置や仕様は瞬時に把握できる。だが、過去の修理履歴、部品交換の記録、担当者のコメント、点検すべき時期といった故障に至るまでの経緯、その後の対応の記録は、BIMだけでは管理しきれない。こうした情報は、むしろ「CMMS(Computerized Maintenance Management System)」のような業務管理システムと連携して始めて、その真価を発揮する。

 そもそも、ひと口に「維持管理・運用」といっても、その内容は多岐にわたる。一般的には「FM(Facility Management)」として総括されることが多いが、その内部には「AM(Asset Management)」「PM(Property Management)」、そして私たちの専門である「BM(Building Management/Building Maintenance)」といった複数の役割が存在し、それぞれが異なる目的と視点を持っている。

 BIMが持つ「見える化」の力は、確かに初期段階の情報共有を劇的に改善する。しかし、あくまで「何が、どこに、どのような状態であるか」という“静的な情報”に過ぎず、日常的に巡視点検を行う熟練の作業員は、BIMモデルがなくても、どこに何があるかは既に把握している。彼らが本当に必要としているのは、日々変化する現場の状況を正確に記録し、共有する仕組みだ。

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