超大型油圧ショベルの遠隔操作開発へ、日立建機が資源大手リオ・ティントと協業:産業動向
日立建機はオーストラリアのTechnological Resourcesと、鉱山現場で超大型建機を遠隔操作する技術開発に乗り出す。2030年までに複数の超大型油圧ショベルが半自動で遠隔操縦できるプラットフォーム構築を目指す。
日立建機は2025年10月8日、資源大手リオ・ティントの技術開発を担う豪州メルボルンにある子会社「Technological Resources(テクノロジカル リソースズ)と、超大型油圧ショベルの遠隔操作技術開発に関する基本合意書を締結した。
合意に基づき、日立建機とリオ・ティントは今後5年間にわたり、超大型油圧ショベルのオペレーターの運転支援や遠隔操作、掘削/積み込み作業の半自動運転といった次世代の鉱山運営を支える技術開発で協業する。
協業の目標は、超大型油圧ショベルの自律運転
24時間365日安定した操業が求められる鉱山現場では、安全性や生産性の向上が最も重要な課題となっている。そのため、超大型油圧ショベルの遠隔操作技術は課題解決に向けた重要な一歩となる。
両者の協業では、日立建機が遠隔操作技術の開発を担い、リオ・ティントが西オーストラリア州ピルバラ地域の鉱山現場で、各技術を搭載した超大型油圧ショベルによる掘削作業、稼働データの提供、フィードバックを行う。半自動運転機能では、オペレーターが掘削の開始位置とダンプトラックへの積み込みの位置をシステムに指示し、その後の一連の操作を自動で繰り返すことが可能になる。
日立建機としては2030年までに、半自動運転機能を備えた複数の超大型油圧ショベルが鉱山現場で稼働可能な拡張性のあるプラットフォーム構築を目指す。
日立建機はこれまでも、超大型油圧ショベルのブーム・アームの耐久性検証やオペレーター運転支援技術の評価など、複数の戦略的な取り組みでリオ・ティントと協業してきた。今回の協業は、これまでの取り組みをさらに発展させ、いずれは超大型油圧ショベルの自律運転技術の実用化に向けた中長期的なロードマップに基づく。
日立建機 執行役 マイニングビジネスユニット 副ビジネスユニット長 兼澤寛氏は「日立建機グループは、1970年代後半から鉱山機械事業に参入して以来、超大型油圧ショベルの技術革新をけん引している。ニューコンセプトのLANDCROSには、Customer、Reliable、Open、Solutionへの想いが込められており、日立建機が進むべき方向を表している。コンセプトのもと、鉱山運営の知見が豊富なリオ・ティントとオープンに連携することで、汎用性が高い自動運転技術の開発スピードを加速させられると確信している」と期待感を示す。
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