フジタや筑波大ら、複数建機が協調する「自動施工」公開 土工プロセスの“一気通貫システム”構築:建機自動化(3/3 ページ)
国交省は、「施工」「データ連携」「施工管理」の3つのオートメーション化で、2040年度までに生産性1.5倍を掲げる施策「i-Construction 2.0」を進めている。筑波大学、土木研究所、九州大学、フジタらは、自動化が進んでいない「土工」を対象に、施工計画の作成から、掘削〜締固めの実施工までの一気通貫の革新的システムを構築した。このうち実施工では、メーカを限定しない複数建機の連携や建機を制御する信号の共通化で、土工の自動施工を実現した。
施工計画を立て、シミュレーションで確認できる3次元施工管理システム
今回は建設会社が施工計画の検討で用いる「3次元施工管理システム」も紹介した。近年、AIを使った施工計画も研究されているが、細かい部分を検討するにはまだ人が必要だと考え、筑波大学が開発しているソフトウェアだ。施工計画から共通フォーマットで動作を指定すると、シミュレーション上で建機の動きを確認できる。シミュレーターと実機は同じ制御プログラムのため、現実でもほぼ同じように動く。
デモでは、安全を考慮して、ゆっくりとした動作速度で行った。省人化効果は未計測だが、「24時間稼働できるので3分の1の速度で動かしても8時間で1日分をシミュレートできる」との説明があった。
2028年には現場適用、その先の2030年度には社会実装へ
自動化技術について永谷氏は、「建機のWindows OSをイメージすると分かりやすい」と解説した。異なる建機であっても、間に共通制御信号を解釈するOSのようなレイヤーを挟むことで、どのメーカーのマシンでも同様の処理で動かせる。共通制御信号は土木研究所と日立建機、コベルコ、コマツが研究中のフォーマットで、データ辞書やシステムアーキテクチャ、セキュリティなど上位の情報を規定している。ICT建機だけでなく、複数手法でレトロフィットさせることもできるという。
SIPは社会実装を目指すプロジェクトで現在3年目にあたり、2028年3月には終了する。永谷氏は「2028年にはフジタ他の現場で動かし、検証するまでには到達したい」と語った。実現場での技術実証ができれば、国交省からその技術の使用を前提とした「モデル工事発注」のお墨付きももらえる。そうすればゼネコンが公共工事で受注し、全国各地の現場で動かすようになる。「SIP終了後の2030年度には、実現場で本格実装するのが理想だ」と展望を述べた。
ゼネコンによっては独自に建機の自動化に取り組んでいる会社もあり、「一緒に組んでシステムとしての完成度を高めるなど、うまく擦り合わせていきたい」と話す。
もともとプロジェクトそのものは「中小の建設会社にまで自動施工を広め、(建設業の格付けで)Cクラスの現場を活性化したいとの意図から始まった。その第一歩として、まず今回、実機を動かした」とし、将来はCクラス現場で2割の導入を目標に見据える。
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