北九州市が手のひらサイズのドローン「IBIS2」で下水管を点検 八潮の道路陥没を受けた全国重点調査:ドローン
北九州市 上下水道局は、Liberawareの狭小点検に特化したドローン「IBIS2」を用い、埼玉県八潮での道路陥没事故を受けた国交省から要請を受け、下水道管の重点調査を実施した。調査は、市内の直径2メートル以上で設置後30年以上が経過した下水管約54キロを対象としている。
Liberaware(リベラウェア)は2025年6月3日、岡野バルブ製造、MAX工業と共に、超狭小空間に特化した点検ドローン「IBIS2(アイビスツー)」を活用した「全国特別重点調査」を2025年5月30日に北九州市内の下水道管で実施したと明らかにした。
下水道インフラ点検の標準モデルに
各社の役割は、北九州市が下水道管点検における課題面の提示、岡野バルブ製造が点検プロセスの構築、現場対応、調査提案、Liberawareがドローンの開発/製造/現場支援、MAX工業がドローンオペレーター援助や現場支援をそれぞれ担った。
今回の調査では、北九州市内に敷設された下水道管のうち、直径2メートル以上で設置後30年以上が経過した下水道管約54キロを対象としている。このうち、初回となった2025年5月30日の調査では、北九州市小倉北区の西港郵便局近くにある直径2.7メートルの下水道管(約100メートル)でドローン調査を行った。
管内水位が1メートル弱で、人が進入できない流域の管内上部で腐食状況やクラック(ひび割れ)の有無を中心に、ドローンを飛行して映し出された動画を基に下水道管の健全度を確認した。
従来の調査では、直径が大きい下水道管の目視による確認は、足場の設置などが必要で、時間と費用を要していた。IBIS2の活用で、安全かつ効率的な狭所調査が可能となる。
国土交通省によると、2023年度末時点で下水道管渠(かんきょ)の総延長は約50万キロに及ぶ。標準耐用年数の50年を経過した管渠の延長は、総延長の約7%にあたる約4万キロで、20年後には約42%の約21万キロまで増加するといわれている(国土交通省「下水道の維持管理」)。
2025年1月には、埼玉県八潮市で下水道管路の破損に起因すると考えられる“道路陥没事故”が発生し、国土交通省は7都府県13カ所の流域下水道管理者に緊急点検を要請するなど、老朽化した下水道管に関する点検体制の構築は急務となっている。
北九州市 上下水道局では、日ごろから下水道管の点検/維持/補修に努めているが、水量の多い場所や硫化水素などの有毒ガスが生じる場所など、人の立ち入りが困難なエリアでの点検方法の確立が課題となってた。こうした中、北九州市は2025年5月30日から国土交通省による「全国特別重点調査」の実施要請に基づいた調査に着手している。
Liberawareでは、今回の活用事例は、下水道インフラ点検でIBISの標準的活用モデルの確立に直結するものと位置付けている。国や自治体の老朽化したインフラ維持管理が喫緊の課題となる中、安全性、効率性、コスト削減を同時に実現できるIBISの運用標準化はこうした課題の解決に加え、国土強靭化に資する新技術としての役割を果たすとしている。 また、IBISの運用フローや点検精度、データの再現性が自体体などに評価され、下水道調査でドローン活用のガイドライン整備や制度化へとつながるとの期待も示している。
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