鹿島が「東北支店ビル」を9階建て木造旗艦ビルに建て替え 木造制震構造採用:木造化/木質化
鹿島建設は東北支店ビルを、純木質耐火集成材を採用した、地下1階/地上9階建ての本格的な木造建築に建て替える。新開発の木造制震構造「欄間(らんま)制震システム」を採用。2028年度内の竣工を目指す。
鹿島建設は2025年5月27日、宮城県仙台市の東北支店ビルを、純木質耐火集成材を採用した本格的な木造建築に建て替えると発表した。新開発の木造制震構造「欄間(らんま)制震システム」を初めて採用する。2026年秋に着工し、2028年度内の竣工を目指す。
建て替え後の規模は、延べ床面積約8872平方メートル、木造(制震構造)一部S造で、地下1階/地上9階建て。設計・施工は鹿島建設。
純木質耐火集成材を活用した木造制震構造
鹿島建設東北支店ビルは東北エリアを統括する事業拠点として、「宮城県沖地震」「東北地方太平洋沖地震」「福島県沖地震」の3度の大地震に見舞われながら50年以上にわたり機能してきた。
今回の計画では、鹿島の制震技術と純木質耐火集成材を組み合わせて開発した欄間制震システムを採用。一般的な中高層木造ラーメン構造では、柱梁接合部の剛性/耐力の確保が難しく耐震性に課題があったが、新システムは、日本の建築様式に見られる「欄間」に着想を得て、欄間状のスペースに制震ダンパを設け、木部材の剛性と耐力を最大限利用しながら地震エネルギーを吸収する制震システムだ。
超高層ビルと同等の耐震設計基準を満たす木造旗艦ビルを実現することで、既存社屋が担ってきた災害拠点としての機能を引き継ぎ、地域の安全安心なまちづくりに貢献していく。
新支店ビルの執務スペースは、柱と梁(はり)が全て木造で構成される多柱空間が特徴。豊富な井水の熱を空調に直接利用した輻射パネルの採用など、自然の力を活用した設備計画とし、最先端のデジタル技術で制御するとともに先進的な環境配慮技術と組み合わせることで新たな木造のウェルネスビルディングを目指す。
建物で使用する構造用木材は、約1810立方メートルを予定している。木材(カラマツ)は需給バランスを考慮しながら、岩手県と福島県にある複数の鹿島グループ社有林「森林もり」(約5500ヘクタール)から供出する他、山林関係者、木材生産者と連携しながら木材調達を進める。
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