中高層木造建築構法「P&UA構法」を採用した伊藤忠商事の5階建て女子寮が完成:木造/木質化
神奈川県川崎市で、中高層木造建築構法「P&UA構法」適用第1号となる伊藤忠商事の5階建て女子寮が完成した。設計・施工は西松建設が手掛けた。
伊藤忠商事は2025年3月3日、神奈川県川崎市に、中高層木造建築構法「P&UA構法」を採用した5階建ての女子寮が完成したと発表した。設計・施工は西松建設が手掛けた。
女子寮は居住用の5階建て寄宿舎棟と交流用の1階建て共用棟から成る2棟構成。敷地面積1169平方メートル、延べ床面積は寄宿舎棟2163平方メートル、共用棟は199平方メートル。寄宿舎棟には実際の建築物の構法としてP&UA構法が初めて採用され、S造と比較してCO2排出量を458トン削減する。
P&UA構法は、高性能な木造ラーメンフレームと強度の高い木造耐力壁を組み合わせることで、中大規模の木造建築物を可能にする耐震構造技術だ。
木造ラーメン構造の柱梁接合部には「GIUA(アンボンド範囲を設けた鋼棒挿入接着接合)」を適用し、パネルゾーンの鉄骨部材と連結して木材割裂を防ぎながら粘りのある接合部とした。耐力壁構造には「シアリングコッター耐力壁」を採用し、地震時に上下の木質パネル間に設けたコッターが変形することで高い耐震性を実現する。木材は国産材を活用し、柱と梁にはスギやヒノキ構造用集成材を、耐力壁にはヒノキCLTを使用。防耐火面では1階部分の柱と梁に90分耐火構造の仕様を取り入れている。
寄宿舎棟は、住宅/建築物の木造化に関する先導的な技術の普及啓発に寄与するものとして「令和5年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)」にも採択されている。共用棟にも木造を採用し、木のぬくもりを感じられる空間とした。
交流を促進する共用部を整備 顔認証も導入
伊藤忠商事は首都圏2カ所に分散している女子寮を統合し、今回新たな女子寮を建設した。社内人脈形成や人材育成の場として、年代や部署を越えたコミュニケーションを促進するため、共用部にリラックスラウンジやオープンテラスなどのコミュニケーションスペース、シェアキッチンなどを設けた。
また、健康経営推進の観点から睡眠の質の向上を促す寝具を導入し、伊藤忠商事でキャリアをスタートする社員が最大限仕事に集中できる環境を整えた。エントランスにはNECの顔認証技術を活用した入退管理サービスを導入している。
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