海老名で構造に国産木材を採用した三井不の新産業創造拠点が着工、2026年6月完成:ロジスティクス
三井不動産は、神奈川県の海老名市役所前で、構造に北海道のトドマツ材を採用した物流やオフィス、ラボなどの機能を備える新産業創造拠点に着工した。設計・施工は日鉄エンジニアリングで、竣工は2026年6月末。
三井不動産は、神奈川県の海老名市役所の目の前にあたる敷地で、複数テナント型の物流用途を含む施設「三井不動産インダストリアルパーク海老名(MFIP海老名) &forest」を2025年4月1日に着工したと公表した。設計・施工は日鉄エンジニアリングで、竣工は2026年6月末の予定。
施設は、神奈川県海老名市の海老名市役所周辺地区に位置し、物流用途に加え、建物全体の約半分がオフィス、研究施設、ラボのなどマルチユーススペースで構成した社会のイノベーションや付加価値創出の場となることを目指した複合業務施設。
三井不が北海道に保有する森林の木材を構造材や内装、仕上げ材に使用
所在地は圏央道「海老名IC」から約2.8キロ、小田急線/相鉄線「海老名」駅から徒歩9分の神奈川県海老名市中央5丁目2番で、敷地面積は約1万9822平方メートル。構造と規模は、鉄骨造一部木造地上4階建て、延べ床面積約4万219平方メートル。
施設は複数テナント型の物流用途を含む施設として国内で初めて国産材を建物構造の一部に採用し、三井不動産グループの新たな木造建築ブランドの名称「&forest」を施設名称に冠した。三井不動産グループの「&マーク」が示す「共生、共存、共創」の理念の下、木造化による木材活用を推進し、自然資源を循環させて未来につづく持続可能な街づくりに貢献する。
新施設で木造柱の構造材の一部や燃え代層の見えがかり部分には、三井不動産グループが保有する北海道美瑛町の森林から採取したトドマツ材を使用し、木鋼ハイブリッド梁(ばり)の被覆木材や天井などの仕上げ材、内装材にも積極的に活用する。
国産材を建物構造に採用する共用部は、特徴的な高い階高(6.6メートル)で、広い空間(10.8×13メートル)で、木造柱+木鋼ハイブリッド梁(二時間耐火)で建設する。木鋼ハイブリッド梁は国土交通大臣認定を受けた耐火構造部材(2時間耐火)を採用。鉄骨梁の周囲に耐火被覆部材として、石こうボードと木材を取り付けた断面構成とし、木材が炭化を伴いながらゆっくりと燃えることで熱の侵入を抑制し、耐火性能を確保することができる。
構造様式は、木鋼ハイブリッド梁フレームに対して鉛直支持力を木造柱が担う「鉄骨造一部木造」となる。共用部のうち木造の一部では、木造構造や木質デザインを積極的に取り入れ、鉄骨造で建築した場合と比較してCO2排出量を約40%低減することを見込んでいる。
メインエントランスは木と植物の風合い、香りを感じられる有機的で柔らかい空間。壁面にはかつて田んぼだった土地の記憶を紡ぎ、「豊作」を象徴する稲穂を表現したアートを設置。欄間職人が伝統技術を駆使して造形し、人と自然の調和を表現する。
3階ラウンジには、保有林の木材を内装や仕上げ材の一部に使用し、木質感あふれる空間を創出。利用する木材の木が生育する北海道美瑛町エリアの森林で音源を採取し、ハイレゾ空間音響システム「KooNe(クーネ)」を用い、森林内の音空間を再現する。物流用途施設に求められる耐火性能を確保しながら、1〜4階まで木質あふれる空間とすることで、ワーカーや訪れる方に安らぎと癒しを提供する。
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