デジタル画像とAIで橋梁点検効率化、キヤノンが大田区らと実証:スマートメンテナンス
キヤノンと東京都大田区、東京科学大学は共同で、デジタル画像とAIを活用した橋梁点検手法の有用性を実証した。
キヤノンは2025年5月19日、東京都大田区、東京科学大学と共同で、デジタル画像とAIを活用した橋梁(きょうりょう)点検手法の有用性を実証したと発表した。従来の近接目視点検と同等の結果が得られる一方で、作業時間を短縮し、交通規制を行わずに点検を実施できる。
建設業では人手不足や技術者の高齢化などを背景に、インフラの定期点検における効率化が急務となっている。キヤノンはインフラ構造物の撮影画像からAIを活用してコンクリートのひび割れや鉄筋露出などの変状を検知するサービス「インスペクション EYE for インフラ」を提供している。
橋梁の中でも、鉄道をまたぐ跨線橋(こせんきょう)は、点検作業時間が列車の運行しない夜間に限定されるため、短時間での作業が求められる。また、横断歩道橋では高所作業車を使用するため交通規制を行う必要があり、地域住民への影響が少ない点検手法が求められていた。
今回の実証では、夜間の跨線橋の点検で、現地で撮影した画像を持ち帰って分析を行った場合でも、近接目視と同等の結果が得られることを確認。現地作業は撮影のみとなるため、作業の効率化にもつながったという。
横断歩道橋の点検では、望遠レンズとミラーレスカメラを組み合わせて道路脇から撮影することで、交通量が多い日中でも交通規制を行わずに近接目視と同等の結果が得られることを実証した。
実証の成果をまとめた論文は、土木学会の「AI・データサイエンス論文集」に採択された。
キヤノンと大田区は現在、ドローン撮影による小規模河川橋点検や手持ちカメラによる橋面点検にも取り組んでいる。キヤノンは将来の点検作業の自動化を視野に、撮影技術や画像解析技術を活用したサービスの展開を通じて、社会課題の解決に貢献していく考えを示した。
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