キヤノンが本格参入するインフラ点検「AIをチューニングして多様なニーズに対応」:検査・維持管理(1/3 ページ)
国交省によると、建設後50年以上経過する道路橋の割合は、2033年には約63%にまで増加すると見込まれている。その一方で、定期点検は管理者による5年に1度の点検が義務付けられているが、ある調査データでは全国の市町村における建設系技術者・作業者数は、2050年度には2010年度と比較して半分以下になると予測され、社会インフラ構造物を効率的に点検する手法は業界を挙げて解決すべき社会課題とされている。こうした社会事情を踏まえ、キヤノンはカメラメーカーとしての撮影と画像解析の技術、AIの3つから成る点検サービスで、2019年12月から市場に本格参入する。
キヤノンは2019年11月19日、橋梁(きょうりょう)やトンネルといったインフラ構造物の近接目視点検に替わる新たな手段として、画像ベースのインフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」の提供を2019年12月下旬に、開始することを明らかにした。
長年にわたり蓄積した撮影技術を有するキヤノンが、インフラ点検市場に参入する理由と他のサービスとの違いについて、キヤノン イメージソリューション事業本部 イメージソリューション22事業推進センター 新規事業戦略推進担当主幹・穴吹まほろ氏と、キヤノンマーケティングジャパン 映像ソリューション共創センター ドローンソリューション課・板橋昭宗氏に聞いた。
高精細画像の撮影と画像処理、AIの3つのサービス
橋梁(きょうりょう)やトンネルなどのインフラ構造物は、高度経済成長期に建造されたものが多く、コンクリートの耐久年度が50年を経過し、急速な老朽化が世界的にみても社会課題になっている。しかし、今ある構造物を長寿命化させるためには、予防保全を行う人材の不足と現状で行っている近接目視の手法が障壁として立ちはだかる。
人による近接目視は、国土交通省が定めている定期点検で定められているが、その手法では大幅な時間と労力を要し、場所によっては足場を組まねばならずコスト面や高所からの落下などの安全面でも懸念材料は多い。
こうした状況を鑑み、国交省では2019年2月に橋梁とトンネルの点検要領を改訂し、近年開発が進む高精細画像を使用した点検方法なども認めるように緩和した。この動向を受けキヤノンは、高精細画像の撮影と画像処理、AIによる変状検知の3つのサービスで構成される「インスペクション EYE for インフラ」の提供を開始するに至った。新サービスは、画像点検で15年以上の実績を有する東京電力グループの「東設土木コンサルタント」と連携しつつ、これまで研究開発を進めてきたという。
サービスのうち撮影に関しては、ドローンとカメラを使い分け、地上からの撮影が可能なら3脚を立て、水上などの場合はドローンを飛ばしてコンクリート表面を撮影する。
カメラ撮影と一口に言っても、点検で必要とされる0.2ミリのひびを見つけるためには、高解像度で撮らなければ、ひびは確認できない。また、橋の下部は暗いため、シャッタースピードを遅くする必要があるが、橋は車両の走行や強風で揺れるため、ピンボケやブレも生じやすい。正確な画像を取るには、キヤノンが持つ高度な撮影技術が有効となる。
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