窓のスクリーンでスマホ9台分を発電、室内から後付け設置可 LIXILが6月受注開始:脱炭素(2/2 ページ)
LIXILは2025年6月、室内から窓に後付けできるロールスクリーン状の太陽光発電設備を発売する。遮光性やプライバシー保護に加え、夏の日差しを遮り、冬場の断熱性も2倍に向上する。発電能力は1枚あたり1日で最大スマホ9台分、またはPC3台分に相当する。
BIPVのように窓を遮らず、既築ビルの脱炭素化も可能に
既築ビルに太陽光発電設備を導入する際は、設置スペースが限られていること、配線の取り廻しが煩雑なこと、入居者に工事期間中の負担が掛かることなどの課題があった。そこでLIXILは、室内から容易に設置できるPVロールスクリーンシステムの社会実装に向け、さまざまな検証を重ねてきた。
2024年3月には福岡県宗像市と協定を結び、市内の施設3カ所で実証実験を行った他、LIXIL千葉支社やLIXIL久居工場などの自社施設でも検証し、製品化に向けた準備を進めてきた。発表後、多くのステークホルダーから導入や製品化の要望を受け、今回マンションやビル/施設の改修を手掛けるLIXILリニューアルで受注することとなった。
PVロールスクリーンシステムは、ビルの外壁や窓面に取り付ける建材一体型太陽光発電設設備(Building Integrated Photovoltaics:BIPV)のように、窓面の発電部で視界を遮られず、開閉動作で必要な時に視界を確保できる。全閉すると、既存窓との間に中空層が設けられ(簡易ダブルスキン化)、断熱性能の向上による省エネ効果も見込める。
新築/既築ビルを問わず、室内から電気工事なしで後付けとメンテナンスが可能で、BIPVの設置が難しいとされる既築ビルの低炭素化が可能になる。
仮に、BIPVシステムを国内の設置可能な既築ビルの窓面(1.4憶平方メートル)に導入した場合、CO2排出削減量は建設セクターの2030年目標で約12%に相当する※2。BIPVの設置が困難な既築ビルの窓部で採用が進めば、PVロールスクリーンシステムの発電性能や断熱性能などで、大きなCO2削減効果が期待できる。
※2 石井久史、壁面設置太陽光発電システム設計・施工ガイドライン2023年度版、PVTECニュース、2024年 Vol.96 3月号 2024年3月
既にPVロールスクリーンシステムは、「令和6(2024)年度気候変動アクション環境大臣表彰」の大賞受賞、「2024年度グッドデザイン賞」を獲得するなど、技術とデザイン性が高く評価されている。
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