2024年度の人手不足倒産、2年連続で過去最多を更新 建設業で初の100件超:調査レポート
帝国データバンクの調査によると、2024年度の人手不足倒産は350件に達し、2年連続で過去最多を更新した。建設業が初めて100件を超え、物流業でも高水準が続いている。
帝国データバンクは2025年4月4日、従業員の離職や採用難などを要因とする「人手不足倒産」の動向調査結果を発表した。2024年度の人手不足倒産は全国で前年度の313件を上回る350件発生し、2年連続で過去最多を更新した。
業種別では建設業が最多で、前年度比17件増の111件と初めて100件を超え、全体の約3割を占めた。次いで物流業で42件となり、前年度の46件からはやや減少したものの、依然として高い水準にあった。両業種とも2024年4月施行の時間外労働の上限規制(2024年問題)の影響が続いている。
集計対象は2013年1月1日から2025年3月31日までに発生した負債1000万円以上の法的整理による倒産事案。賃上げ機運の高まりで中小企業を中心に人材確保が困難な状況にある中、今後も高水準で推移することが見込まれている。
価格転嫁と賃上げの好循環が鍵に
現在、大企業を中心とした賃上げの動きが活発化し、「初任給30万円時代」ともいわれる中、政府は最低賃金を2020年代中に全国加重平均で1500円へ引き上げる方針を示している。この流れを受け、より良い待遇を求める転職者も増加している。賃上げ余力のない小規模事業者を中心に「賃上げ難型」の人手不足倒産が今後も続くと予想される。
賃上げの原資確保には価格転嫁が不可欠だが、全業種平均の価格転嫁率40.6%に対し、建設業は39.6%、物流業は32.6%にとどまっている。帝国データバンクの調査では、「モノの値上がり分は取引先に説明しやすいが、賃上げを理由にすると受け入れられにくい」との声も聞かれ、価格転嫁と賃上げの好循環を確立できるかが今後の重要な鍵となる。
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