KDDIスマートドローン、次の一手は“能登半島地震”で活躍した自動充電基地の「遠隔運航」:第9回 JAPAN BUILD TOKYO(2/2 ページ)
KDDIスマートドローンは、ドローンサービスの次なる一手として、メーカー各社が機体とセットで提供を始めた自動充電付きの基地「ドローンポート」を活用した“遠隔運航”サービスを展開している。既に実績がある能登半島地震での道路啓発工事を踏まえると、現地への人員配置ゼロの利点で、災害時に被災状況の把握や建設現場の進捗確認などでの需要が見込める。
機体はAI自律飛行モデルも含め、4機種から用途に応じて手配
遠隔運航で扱う機体とドローンポートは、屋外用で「DJI Dock2 Matrice3TD/3D」「Skydio Dock for X2」、屋内用で「Skydio Dock for S2+」と2025年夏以降に出荷予定の「Skydio Dock for X10」の計4種類のうち、用途に合わせて最適な機体を手配する。Skydio Dock for X10は、豪雨や最大秒速約12.5メートルまでの強風に耐え、遠隔操縦責任者(Remote Pilot in Command:RPIC)が地上と上空の状況を知るための気象センサーやADS-B(放送型自動従属監視)受信機を備える。
クラウド上に保存する撮影データは、ユーザーのPCからWebブラウザでいつでも閲覧でき、希望すればオプションで3Dデータなどへの加工や解析のサービスも提供する。
サービス費用は、準備に掛かるイニシャルコストと飛行回数に応じたランニングコストが掛かる。
KDDIスマートドローンは、ドローンポートを本格的に活用した2023年7月から数えると、現在までに日本全国で1600回以上の飛行実績を有している。
主な事例では、能登半島地震の影響で通行止めとなった石川県輪島市の国道249号啓開工事がある。建設会社の依頼を受け、2024年9月11日に自動充電ポート付きドローンを常設し、土砂を除去して道を再整備する現場の点群データを取得してデジタルツイン化した。現場のドローンは月曜日から金曜日まで、毎日都内にあるKDDIスマートローンのオフィスで遠隔運航し、撮影した写真をStarlink経由でクラウドにアップロード。写真から3Dモデルとパノラマ写真を生成して、3キロにわたって切土/盛土から舗装まで工事の進捗をデジタルデータにした。
その結果、現場監理業務の作業時間を約80%削減し、ドローンポートを使わないドローン測量との比較では現場までの移動時間や現場での準備やデータ処理などに要する時間を1日あたり約75分短縮した。
また、復旧工事が進む中で2024年9月21日に発生した奥能登豪雨でも、石川県の要請に従い啓開工事と同様の運用体制でドローンポートの運航を継続。豪雨で施工していた盛土がどの程度流されたのか、3Dモデルを生成して迅速な被害状況の把握に役立てた。
他にもサーマルカメラを搭載したSkydio X2とドローンポートで、2024年7月1日から長期間に及ぶ太陽光発電所の夜間警備を行った。全国で発電所内の銅線ケーブルなどが夜間に盗難される被害が多発しているため、ドローンポート2セットを配置し、あらかじめ設定した監視ルートを自動で交互に巡回。監視者は都内から太陽光発電所に、侵入者や不審な動きがないかをモニタリングした。
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