“雪を溶かすコンクリ”をMITと共同開発、「さっぽろ雪まつり」で実証:スマートメンテナンス
會澤高圧コンクリートは、米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同開発した「発熱コンクリートパネル」を用い、札幌市の大通公園で融雪実証試験を実施した。札幌市では2024年度に雪対策費で約278億円を計上しており、今回の実証は効率的かつCO2削減にも寄与する新たな融雪システムの実用化を目的に行った。
會澤高圧コンクリートは、北海道札幌市で開催した「さっぽろホワイトイルミネーション」と「さっぽろ雪まつり」の期間中に、米マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同研究開発した“発熱コンクリートパネル”を用いた融雪の実証試験を実施した。今回の実験は、札幌市と會澤高圧コンクリートとMITが共同設立した「ec3コンソーシアム」の共催とし、発熱パネルの融雪と凍結防止の性能を検証した。
ロードヒーティングと比較して30%以上のエネルギー削減
札幌市は世界でも有数の積雪寒冷都市で、令和6(2024)年度の雪対策費は約278億円に上り、直近の10年間で約1.5倍に増加している。背景には人件費や電気代、燃料費の高騰があり、除雪作業に掛かる労力とコストの増加が課題で、効率的かつ環境負荷の少ない技術の導入が急務となっている。
発熱コンクリートパネルは表層モルタル、導電性(発熱)コンクリート、基層コンクリートの3層構造。カーボンブラック入り導電性コンクリートは圧縮強度30N/平方ミリの高い耐久性を有している。表層モルタルと導電性コンクリートは熱伝導効率を高めるために厚みを最適化し、従来のロードヒーティングと比べると効率的な加熱で必要なエネルギーを最小限に抑えるため、30%以上のエネルギー削減が見込める。導電性コンクリートが均一に発熱するため、ムラなく安定した温度を保ち、効率的な融雪と凍結防止が可能になる。
パネルサイズは1×1メートルを基本とし、柔軟な設計に対応する。シンプルな敷設工法で施工期間や施工費の削減も期待される。
実証実験では、発熱コンクリートパネルによる効率的な融雪システムの実用化を目的に冬季道路管理へ適用した場合を想定し、従来の除雪対策を補完して労力軽減やコスト削減、環境負荷低減などを確かめた。
具体的には、パネルに異なる電圧(24V、12V)を加えて降雪条件下での融雪速度を比較。内部に埋め込まれた温度センサーのデータとタイムラプスカメラの映像で、発熱量と融雪する降雪量の関係を分析した。凍結防止は、電圧の調整が可能なパネルで表面温度を0℃以上に維持するための発熱量を調べ、温度センサーを埋め込んだパネルで外気温と発熱量の関係を記録した。
試験期間は、2024さっぽろホワイトイルミネーション会期中の2024年12月18〜25日と2025さっぽろ雪まつり(第75回)の開催期間にあたる2025年2月4〜11日。札幌市の大通公園西3丁目に試験エリア約5平方メートルを確保し、5枚の発熱パネルを敷設した。
今後は試験で得られたデータを基に、積雪量や外気温に応じた最適な発熱量を特定し、エネルギー効率の高いロードヒーティングシステムの確立を目指す。また、導電性コンクリートの蓄電機能と再生可能エネルギーを組み合わせ、新たなロードヒーティング技術の開発も計画している。
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