大成建設が“CO2を8割削減”する環境配慮コンクリの研究会を設立:施工
大成建設は、環境配慮コンクリート「T-e Concrete」の普及展開を目的とした研究会を設立した。T-e Concreteは、産業副産物を利用することで、製造に由来するCO2排出量を最大で80%削減できる同社が開発した環境配慮コンクリート。
大成建設は2021年1月、温室効果ガスの排出量を大幅に削減する環境配慮コンクリートを使用してコンクリート2次製品などを製作し、建材商品として積極的に展開するため、「T-e Concrete研究会」を設立したと発表。研究会は、土木・建築資材メーカー8社が参画しており、研究会を通じて土木構造物用部材や建築物内外装建材などの多様な商品開発を加速させ、CO2排出量削減に貢献することを目的としている。
一般的なコンクリに比べCO2を8割削減する「T-e Concrete」
建設業界では、CO2排出量削減を目的として、これまで新しい材料や施工法の開発、改善に取り組んできた。2014年に大成建設が開発したT-e Concreteは、普通セメントの代わりに産業副産物の高炉スラグやフライアッシュなどを混合したコンクリートで、その製造過程で発生するCO2排出量を従来の普通セメントを使用する一般的なコンクリートと比較して最大で80%削減する。
また、高炉スラグなどを大量に使用することから、資源の有効利用にも貢献。これまでに、建物内外の土間床下地としてレディミクストコンクリート(生コン)や階段・床材に使用する天然石材調建材T-razzoなどにT-e Concrete を適用してきた。
大成建設は、研究会設立に際し、基幹企業として、これまで蓄積した材料や施工に関する豊富なデータやノウハウなどの基盤情報を商品開発担当の参画企業に提供し、各企業が自社製品の製造技術と融合させることで、多様な商品開発を行っていく。さらに、開発された商品は、参画企業が独自に外販するとともに、同社が施工する工事にも積極的に採用し、さらなるCO2排出量削減を推進していくと表明している。
T-e Concrete研究会の参画企業は、大成建設を基幹として、會澤高圧コンクリート、立花マテリアル、鳥居セメント工業、ブイ・エス・エルジャパン、ホクエツ、北星商事、ポゾリス ソリューションズ、柏木興産。
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