人工光と自然光を組み合わせ苗木を年1万本生産、大林組がパイロットランプ設置:産業動向
大林組は、人工光と自然光の育成環境を組み合わせて苗木生産のコスト効率と生産性を高める「ハイブリッド型苗木生産システム」を開発した。鳥取県内に苗木を年間1万本供給できるパイロットプラントを設置し、周辺地域の林業事業者向けにカラマツの苗木生産を開始している。
大林組は2024年8月2日、植林用苗木の安定供給を目的に、人工光と自然光の育成環境を組み合わせて苗木生産のコスト効率と生産性を高める「ハイブリッド型苗木生産システム」を開発したと発表した。2024年6月に、苗木2400本を年6回育成できるパイロットプラントを鳥取県日野郡日南町に設置し、周辺地域の林業事業者向けにカラマツの苗木生産を開始した。
パイロットプラントでの苗木生産は、日南町森林組合とウッドカンパニーニチナンの協力を受けて行う。年間供給本数は約1万本を予定している。大林組の試算では、苗木1万本を植林し、適切に育林した場合、50年後には約1000立方メートルの木材供給と、約1120トンのCO2吸収/蓄積効果を見込んでいる。
大林組は、木造木質化建築のサプライチェーン全体を持続可能で最適にする自然共生の循環型モデル「Circular Timber Construction」を掲げ、建物への木材の利用推進と、森林資源の持続的な循環利用を推進している。
植林用の苗木は現状、自然光による育成(露地栽培)が主流だが、出荷までに最長2年程度を要し、季節や天候などが成長速度に影響を与えることから、安定供給が難しいことが課題だった。大林組は苗木を安定的かつ効率的に育成するため、2023年に人工光苗木育成技術を開発し、2024年2月からはこの技術で育成した苗木の植林を開始した。
今回開発したハイブリッド型苗木生産システムは、苗木の育成に必要な光や温度と湿度、培地への潅(かん)水などの育成環境を制御する人工光育成期間と自然光による育成期間を、季節や出荷時期に応じて最適に組み合わせて運用する。
例えば、外的環境の影響を受けやすい種まきから2カ月間の幼苗期のみ人工光育成を行い、その後、露地栽培による自然光育成に切り替えることで、植林までの全過程を人工光で育成する場合と比較してコストを約6分の1に抑制する。
また、自然光環境下では成長速度が停滞する冬季に人工光で育成することで、出荷までの期間を最長2年から最短6カ月にまで短縮する。季節や植林計画に応じて柔軟に育成を継続できるため、自然光のみによる育成と比較して安定した苗木育成が可能だ。
植林樹種に選定したカラマツは、国内で植林されているスギなどの樹種と比較して、木材強度が高く、大規模木造建築の資材に適しているという。カラマツの花粉中にはアレルゲンとなる物質が少ないため、スギなどに比べ花粉症を引き起こしにくい。
大林組はパイロットプラントの運用で蓄積した情報を、来期以降の植林用苗木の安定供給に活用し、効率的なプラント開発や運用を進めていく。
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