エンゲージメントを経営の「アクセル」と「ブレーキ」の判断軸に:エンゲージメント向上のポイント(3):「従業員エンゲージメント」を高め、建設2024年問題を乗り越える(5)(2/2 ページ)
本連載では、リンクアンドモチベーション 組織人事コンサルタントの山本健太氏が、建設2024年問題の解決策として、会社と従業員の間をつなぐ「エンゲージメント」とその向上策について解説していく。今回はエンゲージメントを高めながら、いかに事業成果につなげるか、その具体的なポイントについて語る。
組織と事業の現状に合わせたアプローチを
エンゲージメント状態に合わせてアクセルとブレーキを踏み換えることに加え、あわせて「事業の状態」も考慮することで、より精度の高い施策/アプローチが可能になります。当社では、エンゲージメントと事業成果の高低を軸に、組織状態を大きく以下の4つに分類しています。
(1)エンゲージメントが高く、事業成果も出ている状態:市場から選ばれる「強い」組織
組織/事業ともに良好な状態です。新規事業や大きな変革に挑戦しても、従業員は前向きに受け止め、目指す姿の実現に向けて前進してくれるでしょう。
(2)エンゲージメントは高いが、事業成果が出ていない状態:基準が甘くなっている「ヌルい」組織
心理的安全性は確保されているものの、内向きの思考が強く、基準が甘くなっている状態です。組織内で相互理解が深まっている一方で、掲げている目標や基準が低い可能性があります。エンゲージメントの高さを生かして、より事業成果を追求する動きを加速させましょう。
(3)エンゲージメントは低いが、事業成果が出ている状態:疲弊感が充満している「キツい」組織
事業成果を求めるあまり、従業員が目の前の業務に忙殺され、組織に「疲弊感」が充満している状態です。このまま疲弊感が蓄積していくと、組織崩壊を起こしてしまうリスクもあります。中長期を見据えてエンゲージメント向上に投資するなど、組織状態の立て直しが急務です。
(4)エンゲージメントが低く、事業成果も出ていない状態:市場から選ばれない「弱い」組織
組織や上司に対する諦めが、まん延している状態です。部やチームの解散などの組織編成の大幅な改革や、上司と部下のコミュニケーション強化といった目先のエンゲージメント向上に投資することが重要です。
おわりに
エンゲージメントという概念が注目されるあまり、エンゲージメントを高めること自体が目的化しがちですが、本来の目的を忘れてはいけません。「エンゲージメントが高く、事業成果も出ている」という理想的な状態を実現するためには、エンゲージメントサーベイにより常に組織の状態を把握しつつ、事業の状態もつぶさに把握し、組織と事業の両面から改善に向けたアプローチをすることが大切です。
「アクセル」と「ブレーキ」を使い分けるために、エンゲージメントサーベイを活用しつつ事業成果を高め、業界課題を乗り越えるための取り組みを、ぜひ意識していただきたいと思います。
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