通行止めせず高速道路を大規模修繕、鹿島とNEXCO中日本の新工法:スマートコンストラクション
鹿島建設は、NEXCO中日本と共同開発した超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を用いた道路橋床版のリニューアル工法を、高速道路を供用しながら行う大規模改良工事に国内で初めて導入した。通行止めを行わず、約8時間で128メートルの施工を完了した。
鹿島建設は2024年8月30日、高速道路を供用しながら行う大規模改良工事に、超高性能繊維補強セメント系複合材料(UHPFRC)を活用した道路橋床版のリニューアル工法を国内で初めて導入したと発表した。長野県岡谷市の「長野自動車道(特定更新等)岡谷高架橋改良工事」において、通行止めせずに、約8時間で128メートルのUHPFRCの施工を完了した。
新工法は、2020年にNEXCO中日本と共同開発した。老朽化した道路橋床版のコンクリート上面をUHPFRCに打ち替えることで、床版全体の撤去/再構築を行わずに性能を回復する。舗装を含めた厚さを変えずに、耐荷力と塩害への抵抗性を高めることが可能だ。
UHPFRCは、水結合材比が15%程度の極めて緻密なセメント系材料を繊維で補強したもので、防水性や耐久性、強度特性が高い。今回の工事に適用したUHPFRCの規格値は、圧縮強度150ニュートン/平方ミリ、引張強度12.0ニュートン/平方ミリ。
道路橋床版のリニューアルでは、橋の構造によって床版全体を撤去し新たな床版に取り換える工事と、劣化部のみを除去して新たな材料に打ち替える工事がある。岡谷高架橋はプレストレストコンクリート箱桁橋(PC箱桁橋)で、主に後者の方法で改良工事を進めている。
新工法では、PC箱桁橋の床版上面コンクリートの劣化部を除去した後、その上面にUHPFRCを打ち込んで一体化させ、厚さを現況と変えずに床版を高耐久化する。橋梁(きょうりょう)上部構造の重量がほとんど変わらないため、下部構造の補強を最小限に抑えられるのが特徴だ。
施工手順ではまず、片側2車線道路の1車線を規制し、既設コンクリートの劣化部(深さ30ミリ)をウオータージェットで除去した後、レールと専用の施工機械を設置する。その後、現場近くに設置した専用プラントで製造したUHPFRCをアジテータ車で場外から搬入し、撹拌機能と打込み機能を持つ専用の自走式運搬機械に投入。だれ止め剤「アジャストフロー」を添加して撹拌した後、道路勾配に応じた仕上げ性(流動性)に調整しながら打込み位置まで移動する。既設床版面に専用の接着剤を塗布してUHPFRCを打込み、専用フィニッシャーで敷均(なら)して締固めた後、後続台車でこて仕上げを行い、養生シートと飛散防止ネットを設置して養生を行う。
UHPFRCの硬化後は、アスファルト(基層、表層)を舗設し、車線規制を解除する。今回の工事では、車線規制内で搬入から養生までの作業を繰り返し、約8時間で128メートルを施工した。
UHPFRCの打ち換えは、2024年7月の第1期に続き、2024年11月に第2期を予定している。その後も打替えを実施し、6年間で施工延長2066メートル(2万315平方メートル)を完了させる計画だ。
鹿島は、コンクリート床版上面の打替えの他にも、鋼床版の増厚や橋脚の巻立てなどの工事でもUHPFRCを用いた現場打ちによる補修/補強技術を導入できるよう、研究開発を進めていく。
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