最近聞くGNSS/RTK-GNSSってなに?【最新論文で学ぶ土木×ICTのBack To The Basic】:“土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(28)(2/2 ページ)
建設DXの潮流によって、建設現場をヴァーチャル空間にも再現する“デジタルツイン”の活用が進んでいます。リアル空間をドローンやレーザースキャナーなどで3D化するときに欠かせないのが、位置情報を正確に取得する技術です。そこで今回は、Google マップやカーナビ、スマートフォンなど一般社会にも普及したGNSSと、センチ単位に精度を上げたRTK-GNSSといった「測位技術」を改めて解説します。
RTK-GNSSの土木分野での実践例
GNSSの精度を高める方法として、位置の分かっている点と測位したい点の両方で衛星を観測し、双方のデータを用いて位置の計算を行うことで誤差を消去するRTK(Real Time Kinematic:リアルタイムキネマティック)方式が用いられることが増えています※5。
文献6では、小規模土工を対象に、RTK-GNSSによる測位とスマートフォンに登載されているLiDARを組み合わせた計測を行い、下図のような点群を取得しています※6。
※5 BUILT 建設現場を“可視化”する「センサー技術」の進化と建設テックへの道のり(2)「【第2回】高精度の衛星測位技術「RTK-GNSS」がもたらす、建設現場の自動化や省力化」
文献7では、RTK-GNSSの高い精度を利用して、自動車の道路上での走行位置を計測しています。下図に示す積雪の無い11月と積雪が多い2月の比較からわかるように、積雪によって走行位置が変化しています。走行位置のモニタリングで、道路状況の異常や交通事故につながるヒヤリハットなどの検知が可能になると期待されています※7。
下図は、路面下空洞を走行車両で検出するために、クラウド上で走行車両による地中レーダの計測結果をAIで解析し、RTK-GNSSの位置情報等と集約してシステム化しています※8。
今回紹介した研究のように、GNSSで位置情報が付与されることで多様なデータの価値が大きく上がります。また、RTK-GNSSは測位の簡便さやその精度の高さから、紹介した事例の他にも、斜面の監視※9や橋梁のモニタリング※10などへの活用も進められています。デジタルツインやAIと融合させることで、さらなる応用展開の可能性も秘めています。
※10 BUILT “土木×AI”で起きる建設現場のパラダイムシフト(18)「人工衛星×AIを防災/インフラに活用した最新研究 地盤沈下検出や長期モニタリング【土木×AI第18回】」
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