小型地震計測システムを新規自社施工建物に標準装備、飛島建設:BCP
飛島建設は、2024年4月以降に着工した自社施工の建物に、小型地震計測システム「NAMISIIL」を標準装備している。従来は建築コストに見合わず地震計の設置を見送ってきた中規模の建物にも安価に導入できるようになった。
飛島建設は2024年10月21日、自社施工の建築物に対し、小型地震計測システム「NAMISIIL(ナミシル)」の標準装備を開始したと発表した。導入費は無料で、ユーザーは1棟当たり数千円の月額通信費用の負担のみで地震計の設置が可能。従来は建築コストに見合わず地震計の設置を見送ってきた中規模建物にも安価に導入できるようになった。
標準装備の対象は、2024年4月以降着工の自社施工の建物。設置後はNAMISIILが常時建物を計測し、震度3以上の地震が発生した際は、自動で「速報レポート」を作成する。レポートは利用者向けのWebサイトにアップロードされ、ユーザーは被災地から離れた場所でも、速やかに建築物全体の簡易的な被災状況評価結果を把握できる。震度5以上の強い揺れを計測した場合、飛島建設に所属する構造の専門家が別途詳細な分析を行う。
従来の地震計に比べて10分の1のコストで導入可能
NAMISIILは飛島建設が開発した小型地震計測システム。コストは従来の地震計に比べて10分の1と安価で、コンクリートスラブに乾式アンカーを4点打ち込むだけで容易に設置できる。小型PCと低ノイズのMEMS加速度センサーを活用し、計測、記録、制御、分析を1つのハード機器に集約。さらに地震計自体も小型で設備スペースへの設置が可能となったため、既存建物への導入も容易だ。地震計の稼働状況は遠隔通信で毎日確認するため、建物管理者のメンテナンスなどの手間も不要。
システム導入に当たっては、着工後に発注者に対してNAMISIILの説明と地震計設置場所の提案を行う。設置位置や設置数は建物の形状や規模によって変動する。地震計や通信デバイスは原則として設備スペース内に設置し、LANケーブルの配線もパイプスペース内に収めるため、建物の使用に影響はない。地震計設置と動作確認は原則として引き渡しまでに完了し、ユーザーは建物使用開始と同時に観測システムのサービスが利用可能だ。
現在は簡易的な被災度状況評価に関して、安全/注意/危険の3段階で表示するが、今後は地震発生時の事業継続性を即時判断できるように評価精度の向上と情報提供の迅速化で改良を進める。
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