月面建設に向けた圧入技術、宇宙建設革新プロジェクトにて継続採択:産業動向
国土交通省と文部科学省が進める「宇宙無人建設革新技術開発推進事業」で、技研製作所が2024年度も「技術研究開発」フェーズに継続採択された。月面建設での圧入技術の適用を目指す。
技研製作所は2024年5月、国土交通省と文部科学省が進める「宇宙無人建設革新技術開発推進事業(宇宙建設革新プロジェクト)」で、2024年度も「技術研究開発(R&D)」フェーズに継続採択された。月面建設での圧入技術の適用を目指す。
フェーズのテーマは、「回転切削圧入の施工データを利用した、月面建設の合理的な設計施工プロセスの提案と評価」となっている。製造販売している油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー」や回転切削圧入機「ジャイロパイラー」は、機械重量により機体を安定させる必要がないため、原理上は無重力空間でも利用可能。硬質地盤を含めたさまざまな地盤条件にも対応できる。
また、圧入施工中に取得したデータに基づいた地盤情報の推定や自動運転を担う「PPTシステム」を開発している。調査情報が少ない月面でシステムを用いることで、情報の補完や設計妥当性の検討が可能となる。
技研製作所は2022年度より2年連続で同フェーズに選定されており、今回が3年度目となる。契約期間は最長で2025年度までとなっている。
2023年度までは、月面での同社技術の妥当性を検証した。ほぼ水が存在しない月面想定地盤での実大実験や、月面模擬砂(FJS-1g)での模型実験を実施。回転切削圧入などが適用できることを確認している。また、同社技術で建設できる構造物を絞り込んだ他、構造形式の検討を進めた。
2024年度は、絞り込んだ構造物の試設計を実施する。また、設計に施工データを反映させるまでの具体的な流れも検討する。
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