台湾の建設課題を解決する技研製作所の新工法、建設関係者100人超が熱視線:施工
技研製作所とアクティオは、「フライホイール式パイルオーガ」を使用した「硬質地盤クリア工法」のデモンストレーションを台湾で実施した。台湾は礫や玉石を含む地盤が多く、掘削時に振動や騒音が発生するなど住民生活への影響が問題となっている。玉石混じりの砂礫層や岩盤などにも圧入できる硬質地盤クリア工法は無振動かつ無騒音のため、台湾での建設問題の解消に貢献すると期待されている。
技研製作所はアクティオと共同で、技研製作所が開発した「フライホイール式パイルオーガ」を使用した「硬質地盤クリア工法」のデモンストレーションを台湾で実施したと2024年7月に発表した。
台湾の硬質地盤にも対応する「硬質地盤クリア工法」
硬質地盤クリア工法は、技研製作所の油圧式杭圧入引抜機「サイレントパイラー」にパイルオーガを装着し、圧入とオーガ掘削を連動した独自の「芯抜き理論」に基づき、硬質地盤に鋼矢板を圧入する工法。
玉石混じりの砂礫(されき)層や岩盤などにも圧入可能で、1台の機械で地盤掘削と圧入を行い、他工法で必要な地盤を砂に置き換える作業が不要となる。掘削を最小限に抑えられるため排土量が少なく、周辺地盤を乱さずに支持力が強い完成杭を構築できる。
フライホイール式パイルオーガは、油圧モーターの動力を伝える回転軸に、重りを組み込んだフライホイール機構を採用した新型パイルオーガ。重りによる回転の慣性モーメントを用いてトルクを増強し、硬くて掘削しづらい地盤に遭遇した際もオーガ回転速度の急落を防ぎ、安定したオーガ回転を維持するため、掘削効率が向上する。従来型パイルオーガと比べ、ケーシングやスクリュー軸の強度を上げ、エネルギーの伝達効率も改善。「ビット」と呼ばれる切削爪の耐摩耗性も増強している。
台湾でのデモンストレーションは、2024年4月22〜23日に桃園市中壢區青溪路一段1號で計4回実施し、現地の建設コンサルタントや元請業者など100人以上が参加した。現場は、大きな石や玉石が表層に混ざったN値600の超硬質地盤だったものの、硬質地盤クリア工法で振動や騒音を低減しながらU形鋼矢板4枚(400ミリ幅、長さ13メートル)を施工した。
台湾には礫や玉石を含む地盤が多く存在しており、掘削時の振動や騒音による住民生活への影響が問題となっていた。しかし、他工法は、掘削機で地盤を掘削した後、砂置換を行ってはじめて杭打機による打設の工程に入ることが一般的で工程数がかかり、地盤掘削と鋼矢板打設を1台の機械で行えないため、工期の長期化や工費の増大もネックだった。
技研製作所は今後も、これまでの問題を解消する新たな工法として、硬質地盤クリア工法を台湾で工事を計画する上流層に対し、普及活動を進めていく。
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