朝礼の多言語表示で外国人材に対応 言語の壁を解消する三菱電機の「翻訳サイネージ」:安全衛生
三菱電機は、朝礼で外国籍の従業員に内容を円滑に伝達する「翻訳サイネージ」を開発した。事前に日本語の原稿を最大17か国語に一括翻訳し、大画面のサイネージで同時に表示して大勢の従業員に一度に伝えられる。
三菱電機は2024年9月10日、建設業でも雇用が拡大している外国籍従業員との円滑なコミュニケーションの実現に向け、朝礼などを対象に、多言語をデジタルサイネージに同時表示する「翻訳サイネージ」のプロトタイプを開発したと発表した。
母国語で朝礼の内容を正確に伝達
さまざまな分野で外国籍労働者の雇用が拡大しているが、日本人従業員と外国籍従業員との間には言語の壁があり、特に生産現場では日常生活で聞き慣れない専門用語が多く、安全や品質に関する順守事項や作業指示が伝わらないケースが発生している。そのため、生産ロスの増加や品質低下、教育にかける時間の増大などを招いている。
三菱電機は今回、日本語で作成した伝達内容の原稿を事前に多言語に翻訳し、翻訳文章を朝礼時に大画面で同時表示する翻訳サイネージを実用化した。
外国語に翻訳した原稿を日本語に再翻訳して見比べ誤翻訳を防ぐ「折り返し翻訳」、修正した英訳用の日本語原稿を他言語への翻訳用原稿として流用する「多言語翻訳一括作成」といった機能を備える。対応言語は、英語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語など17言語。翻訳サイネージ活用により、言語が異なる多様な国籍の従業員に対し、それぞれの母国語で朝礼の内容を正確に伝達することが可能になる。
サイネージ表示の切り替えは、スマートフォンを用い、現場管理者の手元で伝達項目の確認やサイネージの操作ができる。サイネージで翻訳文章のスクロールが完了したことも通知するため、読めない言語でも表示し忘れや適切なタイミングで次の話題に移れる。
事前に原稿を作成していない内容を追加で伝える場合は、アプリの「音声入力、翻訳、折り返し翻訳」で音声発話で文章を入力し、折り返し翻訳の比較で誤翻訳が無いかを確認して迅速に表示することもできる。
開発に際しては、三菱電機の群馬工場で実証実験を行い、朝礼時の観察や班長やリーダー、外国籍従業員にヒアリング。その結果、外国籍従業員の91%が「朝礼が分かりやすくなった」と回答し、日本人班長も「トラブル発生時の止める、呼ぶ、待つの基本ルールが徹底された」と品質向上に加え、作業員のモチベーション向上にもつながることが証明された。
今後はシステムの社内導入を進め、得られた知見を踏まえ、朝礼向けの翻訳システムだけでなく、作業指導、受け入れ教育、個別相談、全社教育、海外拠点の立ち上げ指導などにも応じられるソリューションとして2025年度以降の事業化を目指す。生産現場での安全や品質の向上、業務の効率化、雇用確保など、外国籍従業員とともに働きやすい職場の実現に貢献していく。
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