あらゆる建機をStarlinkで遠隔操縦 NTT Comが東大発ベンチャーと建設現場の「無人化施工」へ:i-Construction 2.0(1/3 ページ)
NTTコミュニケーションズは、東大発ベンチャーのARAVと共同で、日本全国の建設現場で稼働するあらゆる建機を対象に、遠隔操縦を可能にする「遠隔操縦/自動化ソリューション」の提供を開始した。大手通信キャリアの強みとなる通信は、5Gや固定回線だけでなく、衛星通信の「Starlink」とメッシュWi-Fiも提供し、映像遅延が0.3秒以下に収まる遠隔操作に適したネットワーク環境を構築できる。
NTTコミュニケーションズは2024年6月6日、建設機械の自動運転を目指す東京大学発ベンチャー企業「ARAV(アラブ)」の遠隔操縦システム「REMOTE CONTROL Model V(以下、Model V)」と、「Starlink(スターリンク)」や5Gによる建設現場での通信環境の構築などを組み合わせた「遠隔操縦/自動化ソリューション」の提供を開始した。
同日には、NTTコミュニケーションズの東京都千代田区大手町にある本社で、千葉県柏市の柏の葉スマートシティーに配置した無人の建設機械を遠隔操作するデモンストレーションを行った。
両社の技術融合で遠隔操縦や自動化の導入ハードルを下げ、普及拡大へ
遠隔操縦/自動化ソリューションは、建機にARAVが開発した専用機器を取り付け、NTTコミュニケーションズの通信回線を介して、遠隔で建機をコントロールする。通信は5Gや固定回線に加え、衛星通信の「Starlink Business」も用意し、山間部の道路やトンネル工事、災害対応など、通信環境でトラブルが起きやすい現場でも建機による遠隔施工を可能にする。
NTTコミュニケーションズで、今回の担当部署となる「スマートワークサイト推進室」は、超小型受信端末を用いた高精度位置情報測位サービス「Mobile GNSS」をはじめ、各種建設向けソリューションを「スマートワークサイト」の事業名称で展開している。
土木分野では、小松製作所らとともに2021年4月に設立した「EARTHBRAIN(アースブレイン)」と、建設現場を手軽に3Dデジタル化=デジタルツインを生成し、全ての工程をオープンプラットフォームでつないで最適化する「Smart Construction」の社会実装を目標に定める。建築分野では、竹中工務店や清水建設と検証を重ね実用化したデジタル工程アプリ「GaNett(ガネット)」をはじめ、作業手配やKY帳票、朝礼などの各業務アプリを集約したサービスブランド「tateras(タテラス)」で、施工管理DXを達成し、“建設2024年問題”の解決を目指している。
NTTコミュニケーションズ スマートワークサイト推進室の室長を務める小野文明氏は、ARAVとの協業の背景について、国土交通省が2040年度までに省人化3割と生産性1.5倍を掲げ、2024年4月に公表した“i-Construction 2.0”の中で、建設現場のオートメーション化(自動化/省人化)が柱になっていることを挙げる。
その上で、「建設業界では生産性向上や働き方改革への取り組みが急務で、建機の遠隔操縦や自動化による現場改善が注目を集めている。当社のネットワーク構築と、ARAVの遠隔操縦や自動化の技術で、建設会社の導入ハードルを下げ、全国の建設現場に普及させていきたい」と展望を語った。
2020年4月に創業したARAVが開発した遠隔操縦システムのModel Vは、本社や事務所の遠隔操作席から、制御信号を送り、建機をリモートでコントロールするアタッチメント(制御機器)。遠隔で操作する側のデバイスは、スマートフォンやタブレット、ノートPCにコントローラーをつなげるだけ。
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