顔の変化で“熱中症”を判定するポーラ化成工業のAIカメラ「カオカラ」:安全衛生
ポーラ化成工業は、熱中症リスク判定AIカメラ「カオカラ」を新事業として建設業界への販売に注力している。カオカラは、化粧品開発で培った顔解析のノウハウを生かし、顔の変化と外気温や湿度などの外部情報との組み合わせで、AIが熱中症リスクを判定する。
ポーラ化成工業は、熱中症リスク判定AIカメラ「カオカラ」を開発し、2024年3月から新事業として建設現場向けに導入提案している。
カオカラは、AIによる顔の変化の推定とWBGT(外気温や湿度から算出される暑さ指数)データとを掛け合わせ、AIカメラに顔をかざすと約3秒で熱中症リスクを判定するシステム。
顔をかざして撮影ボタンを押すと約3秒で結果表示
カオカラは、専用に学習したAIで顔画像から体調を推定し、環境データと組み合わせて熱中症リスクを判定する。製品構成は、カオカラがプリインストールされた防水(IPX5/8)または防塵(IP6X)の専用タブレット2種類のいずれかと充電用ACアダプターで構成。タブレットを現場に設置し、起動すれば、後はカメラに顔をかざして撮影ボタンを押すと約3秒で結果が表示される。管理者にとって導入や運用がしやすいだけでなく、作業員にとっても手間がかからない。
AIによる判定は、個人ごとに顔の変化(顔色、表情、発汗)と、WBGT(暑さ指数)の情報を統合して、熱中症リスクを4段階の色表示で知らせる。結果は一元集約され、現場管理者が手元のPCなどで確認でき、リスクの高い人への優先対応など効果的な熱中症対策が可能になる。例えば、一週間の履歴から現場全体のオレンジ色や赤色が増加傾向なので翌日の朝礼で注意喚起を促したり、オレンジや赤表示の作業員に優先して声掛けしたりなどの使い方が想定されている。
ポーラ化成工業は化粧品開発で培った顔解析の経験を応用して、カオカラの製品開発を進めてきた。2023年夏にはプロトタイプを建設現場に導入し、延べ150人以上の作業員を対象に3000回以上の撮影テストを実施。その結果、熱中症リスクの把握に役立つことが証明されるとともに、現場での運用上の課題やニーズを把握した。その後も改良を進め、2024年3月から受注を開始したところ、既に建設業や製造業の企業から多くの引き合いが寄せられ、現在では学校や保育園、幼稚園などへの導入も検討されているという。
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