建設業の8月倒産は“27カ月ぶり”前年同月下回る 全産業も連続記録に歯止め:調査レポート(2/2 ページ)
東京商工リサーチが公表した8月の企業倒産件数で、建設業は2024年最少の件数となる121件だった。前年同月の157件と比べると22.92%減となり、27カ月ぶりに下回った。
8月の主な倒産は、広島県の船舶製造/修繕業「クレサービス」(負債総額109億6100万円)をはじめ、滋賀県の一般個人向け住宅などを手掛ける建築業「みやび建設」(同54億3500万円)、鹿児島県のブリ/ハマチ養殖業「森山水産」(同39億4000万円)、東京都のビルメンメンテナンスを主業にミネラルウオーターの卸しや飲食店コンサルも展開していた「グローバルステージ」(同29億円)、愛媛県の水産物養殖業「極洋フィードワンマリン」(同24億6500万円)などがあった。
TSRの調査によると、みやび建設はコロナ禍での営業活動の停滞と請負代金のトラブルなどで資金繰りが悪化し、8月9日に破産開始決定を受けている。
また、グローバルステージは、他社のビルメンテナンス事業を継承した他、全国に支店を開設し、官公庁案件も獲得するなど事業を拡大していた。しかし、入札案件の一部で赤字となり、採用難が続き賃金上昇によるコスト増大などもあったため、資金繰りが追い付かず、資金調達も難航し、7月20日の事業停止に至った。
負債1000万円未満の倒産は増加傾向に
小企業や零細企業の負債1000万円未満の倒産をみると、2024年8月は44件(前年同月比18.9%増)で、2024年に入り2月と3月以外の6カ月で前年同月よりも増えた。負債1000万円以上の倒産が29カ月ぶりに減少した一方で、コロナ関連の支援策が6月末で縮小/終了したことも影響し、1000万円未満は4月から5カ月連続で前年同月を上回り、小/零細企業の苦境が浮き彫りとなった。
産業別は、最多が「飲食業」5件を含む「サービス業他」の19件(前年同月比±0.0%)。以下、「小売業」8件(同14.2%増)、「建設業」7件(同75.0%増)の順。原因別は、販売不振が31件(同47.6%増)で7割(構成比70.4%)を占めた。形態別は破産が43件(前年同月比19.4%増)で、ほとんどが消滅型の倒産だった。
TSRでは、「負債1000万円未満の倒産は小/零細企業が大半で、金融支援に依存した経営を続けてきたことが要因。政府は2024年6月、コロナ前の水準に戻して、経営改善や再生支援に重点を置く支援を打ち出し、コロナ借換保証などの支援は終了した。9月のドル円レートは円高で推移しているが、物価高は是正されず、人件費の上昇や人手不足が企業活動の足かせになっている。今後、金融機関の貸出金利が引き上げられるだけに、収益力が脆弱で独自の事業再生への取り組みが難しい小/零細企業には、金融機関などの支援が欠かせない」と指摘する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 調査レポート:2024年問題で人手不足倒産が前年比1.6倍、建設業も過去最多ペース
帝国データバンクは、2024年上半期(2024年1〜6月)の「人手不足」に関連する倒産件数について、前年同期比の1.6倍ペースで増えており、年間で過去最多を大きく上回る見込みであることを発表した。 - 調査レポート:2024年問題が直撃し「人手不足」関連倒産が急増、建設業は3.5倍に
東京商工リサーチは、2024年1〜4月の「人手不足」に関連する倒産件数は、前年同期比で2倍以上となり、調査開始依頼最高値となったと発表した。特に「2024年問題」の影響を受ける建設業では同3.5倍となっている。 - 調査レポート:建設業の倒産件数は前年度比35%増の1749件、人手不足/物価高倒産は過去最高に TDB全国調査
2023年度の企業倒産件数は前年度比30.6%増の8881件で、9年ぶりの高水準となった。負債総額は2兆4344億7400万円と、10年ぶりに2年連続で2兆円を超えた。建設業の倒産件数は前年度比35.5%増の1749件で、負債総額は47.1%増の1907億300万円といずれも大幅に増加した。人手不足や物価高を要因とする倒産も増加している。 - 調査レポート:2024年の賃上げ予定企業、建設業では87.8%に 大企業と中小企業で実施率の差が拡大
東京商工リサーチによると、2024年度に賃上げを予定している企業は85%を超え、建設業では87.8%に達していることが分かった。一方で賃上げ率の中央値は前年度を下回り、建設業でも同1ポイント減の3%にとどまった。 - 産業動向:建設業の2023年倒産件数、前年比で4割増に 1600件超えは8年ぶり
帝国データバンクは、2023年に発生した建設業者の倒産件数が前年比で4割増加し、1671件になったと発表した。1600件を超えるのは8年ぶりで、増加率が3割を超えるのは2000年以降で初めて。「2024年問題」で今後さらに倒産が増加する可能性があるとの見方を示した。 - 産業動向:新型コロナ関連で「建設業は915件が破綻」、東京商工リサーチ
新型コロナウイルス関連の経営破綻は、負債1000万円以上で、2023年10月に259件となり、全国では累計7531件となった。業種別では、工事計画の見直しなどの影響を受けた建設業が2番目に多い915件。