スーゼネ5社とブリヂストン、オイレス工業が「免震装置」のBIMモデル共通化 構造設計でなぜ標準化が必要か?:BIM(3/3 ページ)
BIMソフトウェアRevitの大手ゼネコン5社によるユーザー会「BIM Summit」内の構造分科会は、BIMの構造設計で使う「免震装置」のファミリ(BIMの部品)の仕様を共通化した。データ整備には免震装置メーカーのブリヂストンとオイレス工業も参加し、親と子の“入れ子”の構成で、装置選定の設計検討が型番の入れ替えだけで可能になる。
関係者間のデータ連携では唯一のデータかが重要
直近では、2025年度からBIMによる建築確認申請が始まることを見据え、BIM図面審査のサンプルモデル(ネイティブファイル、PDF、IFCデータ)を作成。従来のRC断面図では鉄筋本数や径を図で表していたが、サンプルではRevit User Group(RUG)の構造テンプレートを用いている。そのため、断面図はあくまで凡例だけで細かい情報は表で出力し、図面の表現にこだわらず確認申請を通しやすい形となっている。「他社でも図面審査のサンプルモデルは用意されているが、構造モデルはRevitのみ。構造設計のBIM活用ではRevitが一歩リードしている」(林氏)。
また、関係者間のデータ連携でもデータが重複しない“一意性”は重要となる。メールでRevitのデータを送付していると、送った先にデータのコピーが複製されてしまい、それぞれのPCで編集すると最新バージョンが乱立してしまう。そうしたデータの混乱を防ぐには共通データ環境(CDE)が必須で、解消のためにクラウドベースの「Autodesk Constrction Cloud(ACC)」がある。「ACCはRevitのデータをクラウドに保存することで、関係者がダウンロードせずに(PCに複製を作らずに)Webブラウザで確認して修正などの指示が出せる。唯一の情報源のため、データを探す手間を省け、整合性が取れなくなることもない」(林氏)。
ChatGPTとBIMで「データの民主化」
コンピュータとの共通言語としてもACCは機能する。RevitデータをACCにアップロードするとバラバラの形に分解され、粒度の高いデータ「AEC Data Model」となり、AIや可視化、BI(Business Intelligence)ツール、他社製品でもBIMデータが使えるようになる。
BIMから派生したデータ活用の一例で、ドイツの建設会社「Goldbeck(ゴールドベック)」は、BIMデータをChatGPTに学習させ、自然言語でさまざまな建設情報の検索を実現している。前提としてChatGPTはBIMデータそのもの読み込めないため、データを分解(粒状化)し、データベース化して学習させている。建設マネジャーが「明日、何本の梁が組み立てられるか」「部材配送の準備が整っているか?」「既定のトラックに積めない梁は?」など日常業務の質問を投げればChatGPTが回答し、設計者に質問しているのと同じ仕組みをLLM(大規模言語モデル)で構築した。Goldbeckの例は言い換えれば、知識が無くてもBIMの価値を日々の業務に生かせる“データの民主化”のユースケースとなっている。
ChatGPTに限らずAPI連携するには、Revitのファイルのままでは使えないが、ACCにデータ保存することで自動的に粒状化されたAEC Data Modelとなり、他のアプリケーションで読み込めるようになる。こうした活用のためには、BIMをコンピュータとの共通言語と見做すべきで、1個1個のパーツも共通のデータでなければならない。
そうした需要に応える形で、Autodeskでは2024年8月にDocsのユーザーであれば誰でも利用できる「Content Catalog(コンテンツ カタログ)」を実装した。カタログの名の通り、ファミリやDWGファイル、ブロック、PDFなどのデジタルコンテンツが、常に最新データでクラウド上に保存されている。林氏は「ファミリもバージョンアップすれば自動更新され、Revit連携もしているので、ユーザー全員が同一のBIMモデルを扱える。最新モデルの管理や配布、検索が容易になり、無駄な作業を減らし、設計作業の効率化につなげられる」と解説した。
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