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現場BIMの活用例 Vol.1 「設備配管工事で総合図をBIM化する意義とは何か?」【現場BIM第3回】建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(3)(1/3 ページ)

従来の設備配管工事の検証は、総合図をもとにした個人の目視や電卓、経験則により行われるのが常だった。これが、BIM化されると何ができるようになり、どう変わるのか?現場はラクになるのか?筆者の経験をもとに、設備配管の干渉チェックを例に考えてみる。

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従来の「総合図(プロット図)」を作成するワークフロー

 設備の納まり検討は、建築側(ゼネコンまたは設計事務所)の施工図とサブコン側(設備・電気)の施工図を組み合わせた「総合図(プロット図)」で行う。

 従来手法では、建築側の2次元(2D)建築施工図が先行し、そのCADデータをDXFデータ(いわゆる中間フォーマット)でゼネコンがサブコン(設備・電気)に渡し、各サブコンが専門CADで衛生配管、空調配管、照明器具、スイッチなどを設備・電気の施工図として作成。その後、サブコン側で、サブコン施工図をゼネコン(建築)施工図と重ね合わせ、総合図(プロット図)としてゼネコンに戻し、ゼネコン側で2次元による施工の検証を行う。検証では、換気ダクトが天井内に納まっているか、衛生配管は床内に納まっているか、ダウンライトは取り付けられるのか(埋め込みできるのか)、スイッチの位置は適切かなどを2次元上であらゆる想定をしつつ確認していく。もちろん、ある程度の使い勝手などは、今までの経験則なども踏まえながら決める。

 例えば、天井懐(ふところ)寸法などは、階高をもとに、構造体スラブ厚、天井ボード厚、LGS野縁、野縁受けを引き配管が納まるか、ダクトに保温材が巻かれていればその厚さも考慮し、電卓を叩いて計算する。床懐の寸法でも同様の手順なことに変わりはない。

 さらに、構造体との取り合いも外せない。構造体とぶつからないのは当然ながら、梁(はり)を貫通させるときには、構造体の構造上で貫通可能な範囲内なのか、貫通孔と貫通孔の離隔距離は適切かなどに加え、貫通孔自体の補強方法も検討する必要がある。もちろん、スリーブの入れ忘れ、位置の間違いなどがあってはならない。後からダイヤモンドコアで、構造体を貫通させるなどはもってのほかだ。現実に、そうしたイレギュラーな施工を行い、大問題になったケースもあった。そのため、1つのミスも許されない中で、設備の納まりを検証することが求められる。

連載バックナンバー:

建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜

本連載では、野原ホールディングスの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。

 さらに、メンテナンス段階も見据えた検証も欠かせない。ピット配管であれば、維持管理を考慮し、メンテナンスルートを検証しておく必要がある。ピット間の移動は、地中梁に人通口を設けて移動することになるが、通常は建築工事時に人通口を施工する。しかし、人通口に設備配管や電気ラックが通っていると通れず、メンテナンスが必要な箇所までたどり着けない。つまり、建築段階で設けたメンテナンスルートと設備上で必要な配管ルートを調整しなければならない。また、メンテナンスが必要な場所にたどりつけたとしても、メンテナンスが行える空間が確保されているかも、確認しておく必要があるだろう。

 このように検証すべき項目は多岐にわたる。その上で、2次元図面から問題解決策を導き出す、知見と経験による熟練の目も求められる。そして、こうした検証には建築施工または逆にサブコン側ではできない事柄が入り乱れており、さらに言えば限られた工程の中で全てを終えなくてはならないため、一筋縄にはいかない。

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