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建具工事にBIMが必要な理由と、その先の製造プロセス変革【現場BIM第5回】建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜(5)(1/2 ページ)

今回は、「建具工事」にフォーカスし、BIM活用でどのような改善が見込め、その先の製造プロセス変革がなぜ必要なのかを解説していく。

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 前回「他工種よりも遅れている内装工事のBIM対応と未来への展望」では、内装工事におけるBIMに対する距離感と当グループの取り組みについて説明した。その中で、内装工事でも“BIM対応の号砲は鳴った”との見方を示し、内装工事店は早期にデジタル武装することによって大きな果実を得るべきだと論じた。

当事者のコメントにみる、BIMの徹底活用を阻む壁

 さて連載第5回は、建具工事についてペンを進めていくが、その前に当社の「建設2024年問題とBIM活用の提言」を紹介する記事に対し、メディア上に投稿された声を紹介したい。ゼネコンもしくはサブコンで現場管理をされている方のコメントだと思われるが、その内容は大ざっぱにいうと次の通りだった。

 「現場と本社(BIM推進を担当する部署)で、意識に乖離(かいり)がある」

 「施工ギリギリで出してきて工期に余裕がない」

 「BIMを使えといわれても悪循環、人がいくらいても足りない」

と、BIM導入を全面否定し、今やるべきことはBIMの取り組みよりも、「変更対応に伴う修正業務の削減」「修正業務については、元の受注費用から分離させて請求すべき※1」と重要課題を示してくれている。小生は、何らの責任を伴わない無記名のネットの書き込みは無視する質(たち)で、その物言いに一瞬イラつきながらも、こうした意見は日本の建設業界の現実そのものであり、BIM導入を否定する一方で「BIM徹底活用」を推し進めなければならない理由を逆説的に語ってくれていると感じた。

※1 請求の流れについては、ゼネコンから施主なのか、サブコンからゼネコンなのかは不明だがその両方を含んでもよかろう

連載バックナンバー:

建設産業構造の大転換と現場BIM〜脇役たちからの挑戦状〜

本連載では、野原グループの山崎芳治氏とM&F tecnicaの守屋正規氏が共著で、BIMを中心とした建設産業のトランスフォーメーションについて提言していく。設計BIMについては語られることも多いため、本連載では施工現場や建材の製造工程などを含めたサプライチェーンまで視野を広げて筆を進める。

 BIMの徹底活用が、日本の建設業界の問題を解決してくれる一つのカギだと真剣に考えている方々にとっては、直感的にその意味を理解いただけるだろう。

 前者のBIM推進の壁をどう乗り切るかは、各社で鋭意取り組み中であり、工夫の余地も大いにあるが、「人がいくらいても足りない」は5年先や10年先の状況を見通すならば、そちらの方がより深刻になるのは間違いない。

 後者(修正業務の削減など)は、変更対応(手戻り)を極力なくす、修正業務についてはしっかりと精算し、「持続可能ではない」業界慣習をなくすことである。よく言われることだが、BIMとは設計や図面作成を意味するものではなく、“情報活用”であり、“建設プロセスの再定義”を指す。BIMを徹底的に使い倒すことは、建設プロセス自体を見直し、こうした問題を解消することにある。

 日本でも、「ISO 19650」※2の取得が広がりつつあるが、まさに引用した投稿は、国内の建設業界もISO 19650に準拠した業務プロセスに移行し、その上でBIMを徹底活用することでクリアできる問題といえよう。数十年続いてきた慣習を変えるには、これまでの延長線上の施策では到底無理であって、“外圧(BIM)”を利用するしかない。

 日本人はとかく不得手だといわれるが、「業務を標準化する」「標準化業務にあったシステムや仕組みを導入して業務をそれに合わせる」「翻っていうとISO 19650に沿った建設プロセスに自分達の業務を合わせ、BIMを徹底活用する」といった方向性が冒頭の意見に対する当方の答えである。

※2 ISO 19650は、BIMを基盤として建設資産のライフサイクル全体にわたる情報マネジメントを行うための業務プロセスを示した国際規格

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