工程管理のデジタル化を起点に、施工管理業務を革新 NTT Comが目指す「施工管理業務DX」の姿:建設業界の新3Kを支援するソリューション(3/3 ページ)
NTTコミュニケーションズは2024年7月から、クラウド型デジタル工程アプリ「GaNett」の提供を開始した。これに先立ち、2024年5月には、建設DX関連サービスを「tateras」として体系化し、建設現場のDXを総合的に支援していく方針を打ち出した。そのねらいや、今後の展開について、NTT Comの担当者に聞いた。
工程表作成業務を2割効率化、2026年度に500現場に導入目指す
NTT Comは工程表のデジタル化による効果について、作成時間の節約だけでなく、より正確で迅速な意思決定、リソースの最適配分、リスクの早期発見と対応など、プロジェクト全体の質の向上にもつながると期待している。
GaNettを活用することで、工程表作成や共有に関する業務の2割の効率化を見込んでいる。加えて、GaNettのデータを下流の工程に連携させ、工程管理業務のプロセスの革新や工程計画の精度向上、手配の効率化などにつなげることで、工程管理業務全体で3割程度の効率化を目指す。2026年度までに500現場への導入を目標とした。
今後、工事種別や作業エリア、協力会社など情報を共有したい相手に合わせて、工程表の表示形式を切り替えられる機能なども拡充予定だ。中島氏は「現状では協力会社ごとに必要な情報だけを切り出した工程表を、わざわざ作り直す作業も行われている。ソートをかけて必要な箇所を絞り込み、その部分を共有すれば作成しなおす必要がなくなる」と構想を語る。
APIによるデータ連携などについても検討し、BIMモデルとの連携による4Dシミュレーション(3Dモデルに時間軸を追加)の実現なども目指す。施工図や製作図などの作成、承認、製造工程を作成/管理する機能も追加予定で、将来は設計から製造、施工までの一貫した管理の実現を見据えている。
taterasブランドの展開
GaNettの提供開始に先立ち、NTT Comは建設業向けに提供してきたサービスをtaterasとして新たに体系化し、2024年5月15日より提供を開始した。中島氏は「今回、最も上流にあたる工程管理機能の提供により、われわれが目指す工程管理業務のDXに対し一歩踏み出せた。このタイミングでリブランドし、普及を図る」と話す。taterasという名称には、「建てる」と「照らす」を掛け合わせた意味が込められている。
taterasブランドは、以下の5つのサービスから成る。
- tateras手配:作業調整/手配アプリ
- taterasKY・帳票アシスト:KY活動支援と各種帳票作成支援
- tateras朝礼:朝礼活動支援
- tateras内装工程:内装工程の進捗可視化
- taterasToDoアプリ:タスク管理アプリ
これらのサービスについて上原氏は「個別での導入も可能だが、連携して使用することでより大きな効果を発揮する。ユーザーの課題に応じて、クリティカルな部分から導入いただき、徐々に活用を広げていくことを想定している」という。
今後、大規模プロジェクトや複雑な工程管理を必要とする大手ゼネコンを中心に、中小の建設会社まで、幅広い顧客層をターゲットに展開していく計画だ。段階的な導入も想定しながら、ユーザーニーズや現場の状況に応じた柔軟な提案を行っていく。
中島氏はGaNettについて、「デモ版を操作したユーザーから操作性について高い評価を得ており、UI起点で『使いたい』という声もいただいた。ユーザーのフィードバックを受けながら、引き続きアジャイル型で改良を進めていく」と語った。
NTT ComはGaNettを起点に工程管理の高度化を図るとともに、建設現場のデジタルツイン化や高精度位置情報サービスなどさまざまなアプローチで建設業界の効率化に貢献していく。将来は、AIやIoTとの連携も視野に入れており、例えば工程の自動最適化や、センサーデータを用いたリアルタイムの進捗管理など、より高度な建設DXの実現を目指す。
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