トンネル坑内の掘削出来形3D計測システムを大成建設が開発、計測作業2分で完了:スマートコンストラクション
大成建設は、山岳トンネル工事で、トンネル坑内の掘削出来形を迅速に把握できる3次元計測システム「T-ファストスキャン」を開発した。計測器設定、3次元計測、機械点測量、撤収といった一連の計測作業が計2分で完了する。
大成建設は、山岳トンネル工事において、トンネル坑内の掘削出来形を迅速に把握することができる3次元計測システム「T-ファストスキャン」を開発した。
掘削形状の迅速な計測と現場での出来形確認で、施工の手戻りを未然防止
T-ファストスキャンは、高速処理が可能な3DLiDARと通信設備をユニット化し、機動性の高い小型車両に搭載している。計測器設定や3次元計測、機械点測量、撤収といった一連の計測作業を合計2分で完了する。大成建設によると、従来の3Dレーザースキャナーを用いた従来技術の計測時間(合計15分)と比較して、最大で87%の削減という時間短縮を実現したという。
T-ファストスキャンは、トンネル坑内での切羽掘削形状を迅速に計測し、出来形確認を現場で行うため、施工の手戻りを未然に防ぐ。また、掘削出来形データなどのAIによる分析結果を施工にフィードバックすることで、最適な発破パターンや装薬量の選定、掘削状況の予測評価につなげることも可能だ。
トンネル掘削出来形の3次元計測には3Dレーザースキャナーを用いる方法が一般的だが、一連の作業に相応の時間を要することから工程への影響が大きくなることが懸念され、現場での連続的な運用に際して課題となっていた。
今後、T-ファストスキャンを自社施工の山岳トンネル工事に積極的に導入し、3次元計測技術を活用して、出来形管理業務の効率化や施工の手戻り防止を図る。また、発破後の掘削断面形状や出来形などの各種データを蓄積しAIを用いて分析することで、将来的な発破掘削自動化の実現に向けてさらなる技術開発を進めていく。
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