山岳トンネル工事の発破掘削を震源に用いる「長距離地質探査法」をスマート化、大成建設:スマートコンストラクション
大成建設は、山岳トンネル工事の地質構造を調べる地質探査法を改良し、計測装置に無線通信を採用するなどスマート化を図った。アーム固着式受振器を採用しており、測定時間やコストの削減が可能となっている。
大成建設は2024年5月7日、山岳トンネル工事での発破掘削を弾性波探査の震源に用いる長距離地質探査法「T-BEP(Taisei Blast Excavation Prospecting)」について、改良を施してスマート化したと発表した。
弾性波探査とは、発破などで地盤に人工的に地震波を作り出して、地盤中を進む地震波の伝わり方を観測し、地盤の地質構造(軟弱な地盤の位置や規模)を把握する調査方法のこと。
計測装置の設置や測定時間を大幅に短縮、受振器再利用でコストも大幅削減
これまでのT-BEPは、切羽前方350メートルまでの地山状況を把握し、大成建設によると、従来手法の2倍以上となる長距離探査に相当する。一方で、計測装置の設置から測定開始までの作業に約10時間を要する他、探査開始信号の伝達のために発破装置と受振器を結線する人力作業が必要で、作業効率や安全性の観点から課題だった。
今回、削孔した孔壁に受振器を密着させる方法を、従来のモルタル充填(じゅうてん)方式からアームで固着する機械式に改良した。その結果、受振器の設置から20分程度での測定開始が可能になった。
また、アーム固着式を採用し、繰り返しの使用も可能となり、従来方式と比べ設置や計測に要するコストが約40%削減する。
さらに、ワイヤレス式の専用発振器を新たに開発。受振器の測定データ収録装置に探査開始の信号を送る際、有資格者による人力の配線作業が不要となった。
今後は、トンネルと地表面との標高差が大きい大土被り区間を有する山岳トンネル工事での地山状況の把握に積極導入していく。
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