積水ハウスが「生物多様性提案ツール」を共同開発 1都3県で提案に活用:緑化
積水ハウスとシンク・ネイチャーは、戸建て住宅の建設地ごとに、生物多様性の保全効果が高い最適な植栽をシミュレーションできるツールを共同開発した。
積水ハウスは2024年7月9日、環境テックのシンク・ネイチャーと共同で、建築地ごとに生物多様性保全効果の高い最適な樹種の組み合わせを抽出できる「生物多様性可視化提案ツール(仮称)」を開発したと発表した。
積水ハウスは新ツールを、顧客への提案時に活用する。現在は、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県で試験運用を行っており、将来は全国展開を目指す方針だ。
ビッグデータを活用し、設計段階で生物多様性の保全効果を見える化
両社が開発したツールには、積水ハウスが庭づくり提案時に利用する「庭木提案ガイドブック(庭木セレクトブック)」の樹種データが収録されている。今回、シンク・ネイチャーの生物多様性ビッグデータを活用することで、建築地ごとに、生物多様性保全効果の高い最適な樹種の組み合わせをシミュレーションし、設計段階において保全効果を可視化する。
操作方法はシンプルで、PCやiPadなどの端末から、建築地の住所と樹種数を入力すると、生物多様性保全効果の高い樹種の組み合わせ上位10組が表示される。出力画面では、樹種の組み合わせの効果として、評価につながる3点(樹種組み合わせ、呼べる鳥、チョウ)が確認できる。顧客の希望に応じて、樹種や設計提案の調整も可能だ。
ツールを活用することで、設計担当者は、生物多様性保全効果の科学的なエビデンスの取れた提案が容易かつ迅速に行えるようになる。シンク・ネイチャーの試算によると、新ツールを用いることで、これまでの提案時と比較して、約2.6倍の生物多様性保全効果が見込まれるという。
なお、生物多様性可視化提案ツールを用いて、地域ごとに生物多様性の効果が高い植栽の組み合わせを抽出するのは、積水ハウスの調べによると、世界では初めての取り組みとなる。
2001年から生態系に配慮した緑化プロジェクトを開始、この成果をビジネスに活用
2022年12月に開催された「生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)」では、2030年までに自然を回復軌道に乗せるために、生物多様性の損失を止め反転させる「ネイチャーポジティブ」の実現という新たな国際目標が設定された。
こうした動きに先立ち、積水ハウスは2001年、地域の気候風土にあった在来樹種を中心に植栽するプロジェクト「5本の樹」計画を開始し、累計植栽本数はすでに2000万本を超える。また、生物多様性の効果について、琉球大学理学部 久保田研究室とシンク・ネイチャーと共同で検証し、都市の生物多様性を定量評価できる仕組み「ネイチャーポジティブ方法論」を構築、公開した。
今回、ビジネスでのネイチャーポジティブの実践として新ツールを導入し、外構の設計や住まい手の幸福感の向上を目指す。今後は、試験運用と結果の分析をもとに、展開方法や目標設定について検討していく。
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