プラモデル感覚で自ら建てられる「住宅キット」 VUILDの“建築の民主化”で大工不足に新たな一手:デジタルファブリケーション(2/2 ページ)
VUILDは、人手不足や建設費高騰に対応する新たな一手として、デジファブ家づくりサービス「NESTING」で施主自らが建てられる住宅キットの提供を開始した。香川県直島町の一棟目となる建設工事では、施主の家族が施工に携わり、約2カ月で木造住宅が完成したという。
家族や仲間と共に家づくりする「co-build」
具体的なフローは、設計では専用アプリや設計担当とワークショップを行いながら、理想の住環境を作り込んでいく。部品加工は設計完了後、VUILDの手配で製材を調達し、ShopBotを使って木材加工して、壁や天井となるパーツを製造していく。
基礎工事は、一般的な住宅基礎のようにコンクリート打設をしないため、代わりにDIYに対応する杭工法として、電動工具を使って自分たちで杭を打ち込む。躯体工事は打ち込んだ杭の上に、部品加工した木材を床から、柱を立て、屋根へと組んでいく。1つあたりのパーツは10キロ以下のため、持ち運びにも苦労しない。
内装工事は、木の構造体の間に断熱材を挟んだり、壁や建具を取り付けたりして、その後に塗装を行う。壁や天井は、あらかじめパーツ化したものを取り付けるだけで完了。電気や給排水などの専門工事は、施主の知り合いの業者やVUILDがプロを手配する。
VUILDでは、住宅キットを用いて施主自らが家族や仲間と共に家づくりを行うことを「co-build(コビルド)」と呼んでいる。co-buildは、家族や仲間とお祭りのように楽しくつくることをイメージした造語で、1人でコツコツと時間を掛けてつくるイメージのある「self-build(セルフビルド)」とは違い、co-buildを前提としたことで、施工期間を短くする狙いもあるという。香川県直島町で1棟目として竣工したNESTINGは、施主の友人が全国から集まり、2日間で構造駆体部分の工事が完了し、2カ月で竣工を迎えた。
今後は、日本は地域によって積雪状況など気候環境が大きく異なるため、全国で快適で安全な住まいを作れる構造開発を進めていく。また、令和6(2024)年能登半島地震で被災した地域での住宅再建の取り組みも進めている。
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