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新たな芽をいつか森に、清水建設がイノベーション拠点でゼネコンの枠を超えて目指す姿温故創新の森「NOVARE」探訪(前編)(5/5 ページ)

スマートイノベーションカンパニーを目指し建設を超えた領域でのイノベーションを推進する清水建設。イノベーション創出のための重要拠点として新たに2023年9月に設立したのが「温故創新の森『NOVARE』」だ。本稿では、前編でNOVAREの全体像を紹介し、後編ではDXによる新たな空間創出への取り組みを紹介する。

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モルタル3Dプリンタによるデジタルファブリケーション

 加えてNOVAREでは、建築や空間に新たな価値をもたらす先進技術の活用に取り組んでいる。その1つが、モルタル3Dプリンタによるデジタルファブリケーションの活用だ。施設内でシェル屋根や曲面外壁、駐車場風のアーチ状の建造物などを配置している。曲面外壁は、構造上不要な部分をそぎ落とした形状を3Dプリンタで型枠をオンサイトプリントし、型枠内部にはECMコンクリート(高炉スラグを混入したコンクリート)を充填(じゅうてん)し、技術力をアピールしている。

 鳥越氏は「3Dプリンタを含むデジタルファブリケーションの使いどころについて悩んでいる人も多いが、実際に活用したものに触れてもらえることでイメージを持ってもらうことができる」と述べていてる。

(左)3Dプリンタでコンクリート製の駐車場屋根を製作。(右)一部外壁にも3Dプリンタで製作したものが使われている

水素なども組み合わせ街区全体のエネルギー使用量削減を推進

 さらに、建築物や街区のエネルギーシステムの実証の場としてさまざまな試みを取り入れている。建物単体のネットゼロエネルギー化を進めるとともに、複数建物(街区)で再生可能エネルギーを融通し合いゼロエネルギーを達成する「ネットゼロエネルギーソサエティー(ZES)」を目指しており、街区内での熱の有効活用を進めるため、NOVARE内の各建物間で熱融通システム(多棟マネジメント)を構築。これにより、熱源消費と熱搬送消費エネルギーを合計で10%削減する計画だ。さらに、各建物でも太陽光発電の他、水素製造装置、水素吸蔵合金タンク、燃料電池、蓄電池などを配置し、水素によるエネルギー循環などにも取り組んでいる。

(左)水素貯蔵タンクと燃料電池。(右)道路に敷設され自動車が走行しても問題なく発電できる太陽光発電システム

 NOVAREでの取り組みについて、鳥越氏は「今、清水建設が行っている事業の延長線上のものは基本的には各事業部で行える。ただ、社会の将来像としてありたい姿からバックキャストで考えた場合、今は清水建設としては行えていないこともたくさんある。そういう課題に対し、共感してもらえるパートナーを集い、一緒に課題解決のために何ができるかを議論し、取り組みを進めていける場としていく。その中で清水建設としてもゼネコンの新たな姿を模索していけるようにしていきたい」と語っている。

(後編に続く)

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