BIMデータから建物完成後の無線環境を高精度に予測、NTT西と竹中工務店が共同トライアル:BIM
NTT西日本と竹中工務店は、BIMデータとNTTの無線電波伝達シミュレーション技術を活用して、設計情報から建物完成後の無線環境を高精度に推定する共同トライアルを行い、成功した。2025年度に実際の建物への導入を目指す。
NTT西日本と竹中工務店は2024年4月24日、建築物のBIMデータと、NTTの無線電波伝達シミュレーション技術「Cradio(クレイディオ)を活用し、建物の設計情報から完成後の無線環境を効率的に推定する共同トライアルを行い、成功したと発表した。BIMデータの利用で、これまで膨大な時間を要していた現地での計測作業を省略し、プロジェクトの設計段階で建物完成後の無線環境を高精度に検証できることを確認した。
共同トライアルは、2023年12月7日〜2024年3月29日の期間、大阪府大阪市北区の両社が参画するロボット開発の実験施設「コモングラウンド・リビングラボ」(2室、234.9平方メートル)で実施した。事前に作成されたBIMデータを、Cradioに入力可能なShapeファイル(SHP)に変換した後、Cradioへ入力して無線環境をシミュレーション。結果はスマートビルの分析基盤「BSAP」に取り組み、ビュワーで可視化した。
トライアルでは、シミュレーションによる受信電力推定値と実測値の比較誤差は5dB未満で、無線基地局の設置設計に必要な精度(一般的には8dBを採用)を満たし、BIMデータを使用した無線電波伝搬シミュレーションが有効なことを確認した。設計にかかった時間は90分で、従来方式での設計/確認時間(130分)から30%削減し、さらに、無線基地局設置位置について、従来方式の半分の数で十分な通信環境を確保できることが分かった。また、電波伝搬エリアの各地点の受電電力推定値を建物設計情報上にプロットし、設計段階の無線環境の可視化(ヒートマップ)が可能なことも確認した。
2024年度はより大きな建物での活用検証を行い、2025年度にはソリューションを確立して実際の建物への導入を目指す。
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